機内持ち込みスーツケース

 フランスで私を家に泊めてくれるAnnieに土産は何がいいかと訊ねたら、
去年彼女の娘が日本を訪れた時に買って帰ってくれた和菓子をまた食べたい
と言う。煎餅だ。
 一方、娘の方は、缶に桜の絵が描かれた春限定のクッキー。
 要するに食べ物なんだ。
 それが一番喜ばれるのなら、ほかの人達への土産もそうしよう。
 ただ、全部で七つとなると、大きめリュックでも入らない。
 機内持ち込み用スーツケースがいる。
 以前持っていたのは外側に資料などを入れられるポケットが付いて重宝し
たが、今巷で見かけるのはスーツケースの小型版で、目的地まで一度も開け
ないのが前提。
 今の主流がそうなら、受け入れるしかない。
 機内持ち込み用の中から店員が一番お勧めだと説明してくれたのを選んだ。
 セール価格になっていてありがたいが、黒い色はなんだか仕事の出張用み
たい。
 旅行用なら赤の方が目立っていいし可愛い、と店員と意見が一致。
「買っても買わなくてもいいので、取り寄せます」
 と言ってもらった翌日。
 そのデパートの本店に立ち寄る時間があったので、売り場を覗いた。赤色
の現物があれば見たいと思ったのだ。
 なかったが、飛行機に乗ると言ったら、航空会社によって機内持ち込み用
サイズの上限が異なるので調べた方がいいと言われ、えっ。
 でも、私はガラケー
 すると、その店員は自分のスマホを持って来て調べてくれ、前日取り寄せ
を頼んだ赤色のキャリーケースは、パリまでのJALでは問題ないが、乗り
継ぐエールフランスではサイズオーバーになると判明。
 じゃあ、規定内の最大サイズのは、と聞くと、選択肢はなく、一択。とこ
ろが、外ポケット付きで、あっ、あるんだ。
 前回これをキャリーケースと書いたのは、こういう形のはスーツケースと
呼ばないと思ったからだが、どちらでもいいらしく、日本語はむずかしい。
 なんにせよ、この店員のおかげで、エールフランスで超過料金を取られる
羽目になるのを回避できたし、買うべきのも見つかった。定価なのはかまわ
ない。
 ただ、予想外に高くて悩む。
 いや、友人達に泊めてもらってホテル代が浮くことを思えば、ここで悩む
のは違うだろう。
 まず前日の店員に電話をし、
「同じメーカーのを買ってもらうのですから、全然、大丈夫です」
 と言ってもらってから、目の前のを購入することに。
 が、さらに大型のスーツケースも買うことになり、久々の海外旅行は、旅
費以外の出費が嵩む。