合う「耳かき」は、ある

 鼓膜が破れたことがある。
 飛行機が離陸すると、鼓膜の内と外で気圧が変わり、耳がキーンとな
ることがあるが、鼻が詰まったせいか、日常生活中に発症。
 飛行機の場合同様、唾を飲み込めば治る。
 しかし、いつ終わるという気配も見えず、数日が経ち、夜中に、耳の
奥に強い痛みが生じて、目が醒めた。液体のようなものが流れ出て、枕
を濡らす。
 家族を起こして、救急車・・?
 いや、たかが耳。
 耳鼻科の救急なんて、やっていないかもしれないし、それに、どうし
ても我慢できないわけじゃないなら、むやみに騒ぎ立てずに朝を待とう。
 翌朝、医者が、鼓膜が破れていると言う。
「よく我慢できましたねェ」。
 え。
 我慢できないような痛みに耐えたの私、と思うと、自分自身がいじら
しい。
 大学の夏休み中のことで、休み明けにこの話をしたら、男の先輩が、
「破れたんは、それだけかなぁ」
 その人が言わないような冗談だったので、びっくりして、その言葉は、
生涯、私の耳に焼き付くことになった。
 こんな過去があるせいか、耳かきが当たると「痛っ!」と感じる、そ
こは絶対、外耳道のどこかのはずなのに、また鼓膜に穴が開いたのか、
とドキッ。
 綿棒でも痛く感じるが、耳かきよりは安全だろう。
 ところが、耳鼻科に行くたび、耳垢が診察の邪魔、とばかりに耳垢掃
除から着手されるので、私のような、ねばねばタイプの耳垢は綿棒では
退治できないのかも。
 気づいていたが、この六月も、耳垢掃除のあとの診察と相成るに至り、
そういう状況に平然と甘んじ続けている自分に嫌気が差してきた。
 と、耳垢タイプ別に、どういう耳かきが最適かを検証し、写真も掲載
した、耳鼻咽喉科の先生のホームページに遭遇。
 私には『三連ループタイプのしなやかワイヤー』がよさそう。
 オンラインショップは、クレジットカード番号を記入することへの警
戒があり、最後の手段にしたい。
 すると、ロフトの近くに行く機会が訪れ、立ち寄ったら、案の定、置
いている。
 ただ、残りは一つで、二千百円は結構な金額だと思うけど、人気商品
なのだろうか。
 買う前に試せない不安には目を瞑って、えいや、と購入。
 家で、早速、試したら、これもやっぱり、外耳道のどこかに当たると
「びくっ」と痛いのは綿棒の時と変わりないが、耳垢はずっくり取れた。
 三つのループのすべてに、私のべたべたの耳垢が一盛りずつ。
 ほお・・・。
 しみじみ、眺めた。