日差しに華麗な、関西ファッション

 東京在住のフランス人が出張で関西に来た際、街の印象を聞いたら、
「みんな、ラフなファッションで、ラテンっぽい」
 お。なかなか観察力が鋭いじゃない。
 私達は、実は気質もラテンぽいのよ。
 お高くとまったりしない。
 パリじゃなくて、陽気な南仏みたいなものね、とその方向に私の自慢
が向かったので、その時は気づき損ねたが、彼の言葉と、秋が訪れても
相変わらず強い太陽の日差しに、「あっ」。
 関西は、年中、日差しが強烈。
 そういう所で、黒や茶色やグレーの、女性ファッション誌の中ならエ
レガントに見える配色を着たら、くすんで汚れた着こなしになる。淡い
パステルカラーも然り。で、この地の光に映える色を求めたら、関西人
は「派手」と言われる色彩感覚に行き着いたのではないか。
 パリで買ったアンティーク指輪の石の妖艶なる輝きが、帰国した途端、
魔法のように消え去ったのを、ニホンの気候や空気のせい、と思ったの
は、西ニホンという土地の光のせいだったんだ。
 まあ、この地の人間の私とて、気づくまでにたっぷり時間がかかった
ので、よそ者に、正しく理解せよ、とは求めない。それでも、テレビの
番組制作者の中には、理由を怜悧に分析できる人が一人ぐらいはいても
いいんじゃない。
 出演者にそんな説明をさせたら、関西人の奇抜ファッションをおもし
ろおかしく笑いとばす番組が成立しなくなるので、わざと知らん振りし
てるのかなあ。
 なんにせよ、情報を受け身で鵜呑みにするばかりでは真実に近づけな
いこともある、という教訓であろう。
 私は、もう、今後、この手の番組に遭遇しても、別にいいじゃん、放
っておけば、と感情的に反撥することはあるまい。
 真実を知らずに小馬鹿にする笑い声には、無知を密かに憐れむのみ。
 そして、舞台衣装と見まごう派手な服装の主が、「自分では派手だと
思いませんか」と問われ、「目立ってナンボですもん」と胸を張るのを
見たなら、そうだそうだと寛容の眼差し。
 私自身は、ヒョウ柄も、目眩がしそうにパンチの効いた色の服も持っ
ておらず、「目立ってナンボ」の人達とは一線を画すのだが。
 いや、渦中の人間に客観的な判断力は不可能とするなら、一度、東京
の友にでも判定を仰ぐべきかも。
 ところで、ナンボは、値段を問う時、「これ、ナンボ?」というよう
に遣うが、「目立ってナンボ」になると「目立ってこそ価値がある」の
意味になる。
 考えてみると、不思議。