他力の幸せ

 ツキとは心の状態。心の状態は、その日出くわす赤の他人が自分に対
してどう振る舞うかなどで占える、という考え方に賛成。
 良い店員が応対してくれた。
 物事がとんとん拍子に進んだ。
 そうであるなら問題ない。
 が、なぜか不愉快な人や出来事に遭遇するのであれば、自分の何かが
運気を滞らせる原因になっている。
 本当は、そんな因果関係はないのかもしれない。
 でも、ある、と考えると、何かしら思い当たることは見つかるし、も
しないなら、平凡に生きられている、そのありがたさを当たり前だと思
ってやしないか、と天が気づかせようとしていると考え、恵まれている
あれやこれやを数えれば、不満が収まり、気分は晴れる。
 つまり、結果的に自分自身の得になるので、この考え方を採用するわ
けだ。
 先日、ショートブーツを買おうとデパートに行ったら、購入には至ら
ず、今年流行のロングブーツってどういうのですかねぇと訊ねたら、店
員がさっと一足手元に引き寄せ、こういうシルエットでうんぬんかんぬ
んと説明を開始。
 その熱弁に心が動き、それを履くと、足にフィット。デザインも悪く
ない。
 なら、いいか。
 すると、クレジット会員セールで二十%引きになるし、そのブーツの
メーカーが、そのメーカーのをその日購入してくれる先着十名に消臭・
除菌スプレーをくれるとかで、ダブルの幸運。
 別の日は、別のデパートのショール売り場で「正方形のはありますか」
と聞いたら、もともと数が少ないせいか、店員が色柄を記憶していたら
しく、迷いなく一枚取って私に渡したつもりが、よく似た色柄の長いシ
ョールで、私もすぐに気が付いたけど、かまわず首に巻いたら、以前か
ら私の物みたいにしっくり馴染む。
 そう感じるって滅多にない。
 しかも、ここでもクレジット会員は二十%引きと知り、
「買います!」
 その後、上の階では、マネキンがしているベルトに私のファッション・
アンテナが反応し、十五%引きを確認して、購入決定。
 悩みに悩んで買わないことも多い普段を思うと、ふわっと風に乗り、
次々と最良に出会えていったような感覚が、なんとも不思議。
 ブーツとショールは店員から渡されたのが理想になったので、自我を
消滅させた方が効率がいいってこと、といじけそうになるが、いや、今、
私はツキの進行形なのでそうなったのだ、と明るく解釈することにした
ら、素直に幸せ。
「ルンルン」気分という古い言葉を思い出した。