友達の条件

 友達って何。
 友達だと共通認識し合う条件とは。
 そんな青臭いことを考えたくなった。
 中学生の娘の家庭内暴力は、娘ではなく母親であるアンタに原因があ
ると私が指摘したら、逆上して泣いて電話を切った友達の一件であるが、
実は、その話題になる前まで彼女はほかの悩みを盛りだくさんに語って
いて、それはいつものことだけど、私はいつになく辛辣に応じてしまっ
た。
 楽しいひとときを分かち合えるのが、友達。
 でも、たやすく見つからないこともあるから、手に入ったら大事にす
べし。
 となると、相手が言われたくなさそうなことは言わないのが鉄則だけ
ど、それじゃあ駄目な場合もあるのかなあ。
 前出の友が人を評価する重要な物差しは「学歴と収入」であると、付
き合ううちに見えてきた。
 娘の中学進学のお祝いを実家の父親がくれる気配がないので、せっつ
いて、パート収入が最大限となる働き方で専業主婦が稼ぐ年収分より多
い金額をもらったわ。
 田舎から遊びに来ても、孫に小遣いもくれないので、「変よねェ。う
ちのおじいちゃんは」と娘と二人で言い合うの。
 ・・・
 なんで彼女と友達になったんだっけと過去を振り返るも、思い出せな
い。ま、思い出せたところで、人は、時と共に変わるものだしね。
 私はこの手の話を聞かされる度、大局は聞き流し、でも、「その考え
方には同調しない」「あなたの価値観だけが正しいわけではないと思う」
といちいち仄めかすことはした。
 全然伝わっていなかったみたい。
 その代わり、私が彼女を尊敬していないことは伝わった模様。
 私が彼女を羨ましがらない。
 それが彼女の気に喰わない。
 じゃあ、わからせてあげるとばかりに、彼女の話は微に入り細に入り、
彼女の家庭の事情にまで踏み込む。
 それでも、彼女の言葉は私の心の表面をツルンと滑り落ち、埃のごと
く付着することもない。
 一層彼女はエスカレート。
 そういうことだったのかも。
 どんなに目を見張る話でも、金額でも、無関心。そんな私自身の反応
が誇らしいが、ついに限界は来た。
 そして、自分の大切な物差しを、私から滑稽そうに見られていると気
がつくと、彼女は、瞬時に私を断ち切った。
 彼女は私を見下し、私も、ある面では、彼女を見下している。
 そんな二人が「友達」になれるわけがない。
 けど、もし毎回、私がもっと強く意見を述べ、彼女がエスカレートす
るのを阻止できていたら----。
 チラッとそう思ったりもする。