デパートの靴売り場で、試し履きした靴を鏡の中で前後左右から眺め
つつ、出てくる言葉は、
「可愛い」
「うーん、可愛い・・・」。
担当してくれる男性店員も、
「可愛いですよね」
あはっ。それしか言葉を知らないお馬鹿同士みたいね。
茶化したくなるのは、なんでもかんでも「可愛い」一辺倒のボキャブ
ラリー極貧現代風潮をひそかに侮蔑している私だったからだ。
口が裂けても、大人に向かって「可愛い」とは言わない。はずが、つ
いに言っちゃった。
けど、自己弁護させてもらうと、その靴は「可愛い」以外に適切な言
葉がない、実にキュートなデザインだった。
パンプスでもブーツでもないが、ブーツにかなり近い新たなジャンル
で、「ブーティ」と呼ぶそうな。
本当はパンプスを探していた。
いくらおしゃれは先取りが格好良くても、今の季節にブーツは、水虫
というリスクが怖い。
なので、パンプス。かつ、ヒールは高め。
というのも、買おうとしたパンツが、私の手持ちの靴では、裾が床を
擦ってしまったからだ。
お金を払って裾上げしてもらう・・・?
そういう経験がないと、その余分な追加料金を必要経費と認める発想
が持てない。春物が70%値引きになったパンツであれば、なおさらだ。
裾上げ料金を払うぐらいなら、そのパンツを買うのをやめます。
けど、そうだ、パンプスを買えばいいんじゃないの。
パンプスは、ローヒールですら一日中ラクに履けそうな物と出会えず、
長年にわたり、春と秋の足もとのおしゃれが大きくマイナスの私だった
が、今年は私の足に合うパンプスが見つかるかも。
残念。
デパートで何足も試すも、すべて、足が拒否する。
ならば、靴とパンツを諦めましょう。
さばさばした気持ちになるが、もう一度だけ試してみたく、近所のデ
パートに行ったら、甲の部分が深いパンプスが目に入った。
勝手に試し履きしていると、男性店員に声をかけられたので、それの
色違いを出してもらい、ほぼそれに心が決まりかけたものの、
「私の足に合いそうなのは、ほかにありますか」
と聞いたら、前出のブーティを紹介されたのだ。
ヒールは七センチあるが、爪先を締め付けられる感覚はない。
淡いベージュは、取り置いてもらっている茶系のパンツにぴったり。
うふっ。いよいよ、私にもおしゃれな秋が到来だぁ。
今週、履いていきたいなあ。
履いても蒸れないかなあ。
今日はサンダルでちょうどだったけど。