稀少な婚活

 私の人生に結婚は必要、と気づいて婚活を開始する。
 けど、女の人は三十五を過ぎると、辛い現実にぶち当たって自信喪失
させられることも覚悟しておくべきなんだなあ、と何人かの友の体験か
ら学ばせてもらった。
 自分より二、三歳上まで。
 そんな謙虚な目標ですらあざ笑われる。相手の男性から、である。
 ましてや年下なんて厚かましすぎる。
 しかし、そんな奇跡を実現した友がいる。
 三年前、彼女は四十一だった。
 出会いの一つにと結婚相談所に入り、そこの担当者は個人的に友達に
なりたいほど良い人だが、出会いに関しては、傷ついたり、むっとさせ
られることもあり、もはや幽霊会員と化していた。
 が、ある日、担当者から今度のパーティにはぜひ来てくださいと連絡
が来て、どうせまた時間の無駄、と思うものの、熱意にほだされ、参加
したら、案の定、どんよりした気分に襲われるばかり。
 男女が向き合って言葉を交わし、一定の時間が来ると椅子を一つ横に
動いて相手を変える「回転寿司コーナー」の時間が来た。
 一人の男性が彼の仕事内容を述べると、彼女は、その仕事について唯
一知っている知識を口にした。
 そこで時間が終了して、彼は、彼女の視界と心から消えた。
 ところが後日、彼がまた会いたがっていると担当者から連絡が入る。
 人として好感は持てる。でも、彼女の過去の恋愛経験に照らし合わせ
ると、かくも心がときめかないのでは結婚はできないと判断するしかな
い。
 相手の方が年下なので、
「子供が産めるかどうかもわからないし」
 と彼女は牽制。
 それでもかまわないと相手は彼女に執心する。
 彼は、その時のパーティが、入会して初めての「嫁」探しの日だった
のだが、ほかの会員とは会ってみようともしない。
 彼女は、結婚生活が長い姉と妹に意見を求めるべく、彼を紹介した。
 二人は、揃いも揃って彼を高く評価する。
 そうなっては、彼女としても本気で考え直してみる気になる。
 かくて徐々に前向きな気持ちになり、結婚を決意するに至ったそうな。
 自分のことを本気で考えてくれる、自分以外の人間に意見を求めた。
そこが彼女の偉さだが、もしその賢明さがなければ、婚活ではフツーは
あり得ない年下の男性であっても、平気で却下していたんだ、と思うと、
なんとまあ贅沢、とクフクフ笑えてくる。
 ちなみに、彼女は結婚後すぐに子供を授かり、今や一歳半。
 至福の結婚を手に入れた友である。