買わない勇気

 使っていたiMacが有線ではインターネット接続ができなくなり、新し
いのを購入したが、そこから部屋の大掃除にまで発展するとは思わなか
った。
 パソコン置き場はもうあったから。
 昔、パイン材の机を買った。
 幅は120cmと広めだが、奥行きは狭い。
 店ではそれがむしろおしゃれに見えたものだったが、部屋に設置して
すぐ後悔することになったのは、家の中でもハイヒールを履くならいい
だろうけど、という高さだったからだ。
 しかし、引っ越す時に、それまで使っていた小さな食卓はいらないと
いうことになったので、パイン材の机はパソコンとプリンター置きにし、
その手前に食卓を置いて、そこで読んだり書いたりキーボードを打つこ
とにしたら、またとない理想の環境。
 こうなる未来を見越してパイン材の机を買ってあったのだ、とうそぶ
きたくなる。
 古いiMacは予備機に置いておくと決めたが、新旧iMacを二台並べ、そ
の横にプリンターでも余裕。120cm幅の威力である。
 ただ、空いたスペースに置いていた鉛筆立てなどが行き場を失った。
 どこかに置くためには、置く場所がいる。ココに置こうと決めると、
今そこにある物をどこかにやらねばならぬ。
 玉突き状態だ。
 かくて、今月は、予期せず“不用品一掃月間”となった。
 さわやかな季節ゆえ、それもよかろう。
 けど、なんでこうも作業が進まない?!
 きっぱりした判断力で大量のゴミ出しに成功したのは初めの二日間だ
け。
 その後は、仕分けを待つ物達の新たな居場所はそこに決まった、と錯
覚しそうに、部屋のあちこちに散らばったまま。
 たとえば、パソコンのおかげで手書きしなくなって久しい私に、鉛筆
立て三つは多すぎるだろう。
 だが、ああ、この蛍光ペンは色がかすれてきている、と確認しても、
でも、まだ使える、と元に戻す
 持ちにくいボールペンは、でも、サラだしもったいない、と捨てられ
ない。
 筆記用具一つ取り上げてもこのありさまなら、あとは推して知るべし。
 どうやら、物は、持つと処分に困ることになるらしい。
 ならば、最初から持たないこと。
 学んだ私が、近所のバザーが終わりかけの時刻に通りかかると、木の
ボールが半値の150円で叩き売り状態。
 木目が美しくないからだと見た。
 でも、自然の木から作られたことを思うと、無視するに忍びない。
 大きいボールは果物入れにちょうどよさそう。
 正解でした。
 けど、残る五つの小鉢はどうしたものか。
 行き場が決まらず、食卓の上に共に鎮座して、はや一週間である。