それも愛情表現?

 二月に入った途端、空気がほわんと春になった。
 四日目の立春ともなれば、春はもう決定的。
 光、風。
 枝の先っぽの硬い新芽も、雀の明るい囀りも、みんな「春モード」。
 立春は決してカレンダー上のたわごとなんかではなかったのね。
 二十四節気をあなどっていたことを反省する。
 寒さがぶり返したとしても、もう冬ではない。
 で、二度目の餅つきを急がねばと慌てたダンナが日を決めたので、手
伝いに来ないかと、きのう、友達に誘われた。
 しかし、かき餅作りは、機械でこねた餅を大きな入れ物に詰めたら終
わり。細かく切るのは何日間かあとの作業になるし、私は何を手伝うこ
とになるのだろう。
 要は、年末の丸餅作りに行けなかった代わりに、今回遊びに来たら、
ということだったみたい。
 おかげで、久しぶりに友達とゆっくり話せた。
 ところで、昼食の時、彼女のダンナが私に向かって、こうのたもうた。
「ちょっと痩せなきゃ。な」
 真向かいから私の顔をとっくり眺めたせいの意見であるなら、無理な
注文。
 だって、丸顔は生まれつき。
 で、思い出した。
 個人的に英語を教えている小学二年の女の子は何ヶ月間もずっと無口
なおとなしい子で通してきたのに、去年の秋に私がキャリーを引っ張っ
ていくと、
「それ、可愛くない。前のピンクのかばんの方がいい」
 と突然意見した。
 秋冬は持ち物が増えるので、かばんじゃ無理なの。春まで待って。
 この日を境に彼女はずけずけ物を言うようになり、先週は私の髪が槍
玉に。
「まっすぐに戻したら」
 戻す? 無理よォ〜。天然だもの。
「じゃあ、まっすぐに伸ばせる器具があるから、それを使えば」。
 ドライヤーを当てるような仕草をする。
 そんなにも私の癖毛がお気に召しませんかね。
 ところが、この日、彼女は頭に十センチほどの大きなピンクの花の髪
飾りをつけていて、それを見た同学年の男の子に、
「沖縄に行って来たん」
 と聞かれると、
「んもう。ハワイ行ったんとか、なんで、みんないろいろ言うんかなあ」
 と口を尖らせ、それをはずした。
 あなたが私の癖毛に苛立つみたいに、見慣れないものは、正しく評価
も判断もできないものの、妙に意識させられることだけは確かで、それ
では気持ちが疲れるので、何か言って止めさせ、心の平安を取り戻そう
とするのだと思うよ。
 それにしても、ほんと、どうして人のことをあーだこーだ言うのなあ。
 気を許しているから?
 ・・・だとしたら、それ自体は嬉しいことだし。
 うーん、やるせない。