日本語と比べたらよっぽど使用人口の多いフランス語。
それでも、
「旅先ではやっぱり英語」
と英語コンプレックスがあるのか、フランス人の知り合いに、私が個
人的に英語を教えているのは留学した経験があるからかと聞かれた。
彼女は友達のおかあさん。友達とは疎遠になったが、まだ会ったこと
のない彼女とはメールやSkype電話をする関係が続いている。
私の初めてのフランス滞在は中学校で教壇に立つためだったが、彼女
の子供達はその中学校で学んだ。私の滞在期間とは重ならないけれど。
なので、教師の話になると、
「ああ、あの人」
とわかり合うことが多い。
私は、留学の経験はないけれど、その中学校からの修学旅行で、二回、
英国に行ったと答えた。
一回目はフランスに着いて早々の春で、フランス人の教師達よりホー
ムステイ先の英国人と話す方が深く話し込めた。
だが六ヶ月後、再び同じ状況になると、今度は英語が出てこない。
「使っていないと話せない。使っていれば話せる、そういうものではな
いでしょうか」
私はそう話を締めくくるつもり。
でも、一直線に結論に飛ぶのでは芸がない。こんな情報あんな情報を
ちょこちょこっと盛り込んだ方が楽しんで聞いてもらえると思い、
「二人の教師と同じ家に泊まったんですが」
という情報を挟んだ。
すると、その二人が誰だったのかに激しく興味が掻き立てられたらし
く、正確な氏名を突き止めずには話を先に進めさせてもらえない雰囲気。
仕方なく、パソコン保存の当時の書類を開いて、彼女の要望に応え、
それで寄り道を切り上げようとしたら、今名前が出た教師のミシェルだ
けど、彼女の娘が、あなたがいつもインターネットで見ているフランス
のニュース番組の海外リポーターなのは知っているかと彼女が言い出し
た。
「名字が同じだし、おかあさんと顔立ちがそっくりなので、おかあさん
に会った時に確かめたら、やっぱりそうだって」
ええーっ。
昔、家に泊めてもらった時に会いましたよ、その人なら。
そして、私はなぜだか、急にそわそわ。
でも、あそこは三人姉妹。何番目の人かしら。
ゲスな興味だと思いつつ、互いの情報を付き合わせ、真ん中の娘だと
特定できた時には、時差の関係でフランスは0時前。
「じゃあ、また」
女の人の話は、どんどん横道に逸れて、何の話をしていたのかわから
なくなったりする。
それが嫌で、最後にはきりっと本題に戻そうとする私なのに。
そうできなかったなあ。
驚きの情報だったからかなあ。