世界一を、ありがとう

 夜中に何度か目が醒めた。
 寝る前、
「三時半ぐらいに目が醒めたら、FIFA女子ワールドカップの日本対アメ
リカの決勝戦を見られるなあ」
 などと思っていたけど、一時過ぎに目が醒めたのは、ちと早過ぎる。
 トイレから戻って目をつむり、考えた。
 決勝戦の開始から生中継を観戦すれば、昼寝で睡眠を挽回しても頭は
しゃきっとせず、一日を棒に振ることになるだろう。それに、私は、な
でしこジャパンの快進撃を知って興味を持っただけの、にわかファン。
 しかし、「じゃあ観ない」とも「やっぱり観る」とも決意せぬまま眠
り、数時間後。
 左足がつった。
 時間は確かめず、暗闇の中でのたうち回り、足を揉みほぐし、悪い予
感を抱きつつ再び夢の世界へ。
 前に足がつった時は、時間差で両足をやられたのだ。
 すると今回も、時間を置いて右足がつった。
 かように不本意に眠りを妨げられてばかりでは、決勝戦を観なくても、
睡眠不足は確定的。
 だが、両足がつったのは、観るか観ないか、ピシッと決断しない曖昧
さが招いた事態のような気がしてならない。しかも、熟睡も生中継観戦
もどちらも無理な状況に追い込まれた。
 どっちつかずって、最悪ってことなのね。
 いつもより若干早い六時前に起床した。
 テレビをつけると、一対二で日本が負けている延長戦のまっ最中。
 そこから日本がアメリカに追いつき、PK戦で優勝をもぎ取るまでを
見届けることになったので、にわかファンとしては「いいとこ取り観戦」
をさせてもらったみたいで、恐縮だなあ。
 決勝が決まった瞬間、私は、図らずも、絞り出すような涙が出た。
 男子サッカーとは比べようもなく地味な女子サッカー
 でも、「サッカーが大好き」という思いに誠実に戦い続けてきた選手
達。
 その打算のない美しさが実ったことに思いを馳せると、心の底から、
「良かったね。よく頑張ったね」
 彼女達の表情も新鮮だった。
 ちっちゃな目。
 おお、これこそ、まさしく日本人の顔ではないか。
 通常、テレビに登場する女性達は、これでもかというぐらい気合いの
入った目化粧で、″脱日本人顔″を実現してこそ美人、みたいな思想を
まき散らしているけど、自分自身に自信があって、内面から輝いていれ
ば、素のままの日本人顔で世界と対等に渡り合えるのよね。
 さて、台風が近づいているらしく、朝から雨。
 今日は一日、だらだら過ごせばいいのだよと、あらかじめお膳立てさ
れていたみたいな祝日になった。
 流れには乗るもの。
 気分良く、だらだらしてます。