真夏は、アウトドア素材

 暑い。
 まだまだ暑い。
 が、八月に入ると、空は青さが、空気は透明度が増して、秋の気配が
混じり始めた。
 ここからが長いんだけど。
 外に立っているだけでも、汗が背中を伝うはず。
 って、ひとごとになっている私。
 私はもともと素材にはうるさくて、綿や麻やウールなど、天然素材志
向だった。
 ただ、綿は水分の吸収力はよいが、一旦中に取り込まれた水分は長く
そこに留まり、素肌にじかに接していると身体が冷やされる。
 山の遭難者の生死を分けるのは下着の素材、とは今や常識。
 でも、山じゃないし。
 そう思っていたのだが。
 長年、蒸れないレインコートを探していて、この春、
「山用の製品だったら・・・?」
 と閃き、街着としても着られそうな膝丈のレインコートを見つけて、
「アウトドア製品の素材って、かなりの優れものよね」
 と気がついた。
「なんで、街着をそういうので作ってくれないのかなあ」
 あ、街でも着られそうなのを見つければいいか、と発想したのが運の
尽き。
 透湿速乾素材のシャツとカットソーとパンツと手袋を買った。
 UVカットの帽子も。
 それで里山を歩くと、歩いている最中も、立ち止まった直後も、汗を
自覚する事態にならない。
 衣服が原因の不快感がゼロになれば、純粋に自分の身体の能力だけに
意識を集中できる。
 感激・・・。
 納得したら、一直線。
 たかが首に巻くスポーツタオルにそんな値段出せますか、といつもデ
パートの売り場で鼻であしらっていた百パーセント化繊のタオルも買っ
た。
 化繊独特の感触は綿には劣るけど、汗が首を伝うとか、タオルが汗を
吸い込んで重たい、冷たい、ということはない。
 私はアウトドア素材にひれ伏した。
 私が長袖なのを見て、個人的に英語を教えている小学生から、
「あり得へん」
 と言われても、
「私の方が体感は涼しいと思うよ」
 心の中で不敵に微笑む。
 真夏の服を全部アウトドア製品に変えたいぐらいだが、手持ちの服で
十分であるとして、今年の衣服費予算をゼロと見込んでいた私にとって
は思わぬ出費の連続で、夏のバーゲンでは街着用にTシャツとパンツを
買い増すのが精一杯。
 去年、色違いでコットンパンツを二着も買ったのに、出る幕がないの
で、無駄買いだったかと悔やみそうになるけれど、真夏を過ぎてからが
出番よね。
 日本の夏は「真夏」と「その前後」に分割して、真夏はアウトドア素
材で乗り切るべし。
 ようやくそう発見できて、これからは、真夏を好きになれなくても、
憎むことはなくなりそう。