心の夏バテ

 夏は風邪を引くし咳が長引く、と思っていたのは、正しい医者の正し
い見立てでアレルギーと判明して以降、ひどい咳とは縁が切れたが、き
のうは珍しく長時間咳き込んだ。
 土用は次の季節に移る時期で、呼吸器系疾患の人達は、身体がいち早
くそれを察知して体調が悪くなる。
 今年の夏の土用は八月六日に明けた。
 個人的に英語を教えている中三の子が喘息でレッスンを休んだのは先
週だったので、若いとやっぱり敏感なのかも。
 今朝、私は起きる直前まで夢を見ていた。
 夢を紡いで脳が活動しすぎるのか、夢の途中から頭が重たくなり、目
が覚めたのはそのせいもあった。
 その後は一日中、頭がぼんやり。
 暇つぶしにテレビを観たりしただけで、これじゃあ、ああいう人達の
ことを、
「それでも生きていることになるのかなあ」
 なんて言えなくなるなあ。
 アフリカの僻地などに住む人々の日常を映像で見るたび、満足に食べ
て、しっかり眠り、子孫を残せたら人間として十分、と思うも、
「それだけでいいの」
 と思う私だったのだ。
 おかあさんの胸に張り付いて乳を飲む赤子。
 有意義なことをしているのはその子ぐらいのもので、家のまわりをう
ろうろしている子供達や、輪になって座り込んでいる大人達は、それで
も生きていると言えるのか。
 けど、テレビやゲームや趣味に興じていれば、ぼんやり時間をやり過
ごすより高尚なのかと考えると、
「あ、大同小異・・・?」
 と気づいてしまった。
 一方、夜はアルコール、という大人達のことは、素直に、
「羨ましい」
 私が飲めない人間だからではない。
 アルコールは脳を麻痺させる。
 ビールと焼酎好きの知人女性は、
「酔っているあいだのことは覚えていない」
 とあっけらかん。
 それって時間を棒に振っていることにならないの、と思いそうになる
けれど、そういう人は、夜の時間を棒に振ってもいいぐらい、昼間集中
して有意義に過ごしたのだろうから、
「ああ、羨ましい」
 うふっ。
 酒に飲まれ、溺れているような人も多いとわかっていての発言です。
 厭味だったかしらん。
 きっと、今日は私、心がバテているんだわ。
 身体もなんかだるいし。
 こういう時、みんなはどうするんだろう。
 先日、花火大会で写真を撮った。
 三百六十一枚。
 撮るのに集中すると、生の花火を見逃す。
 花火に見入ると、撮るタイミングをはずす。
 なんであれ、花火は数秒で消える。
 一瞬は一瞬で過ぎ去り、二度と戻らない。
 その当たり前で怖ろしい事実に改めて気づかされたばかりなんだけどな。