スポーツシューズ

 ウォーキングシューズの左足の、本体部分と底が分離した。
 靴底が減る以外にも、こんな寿命の訪れ方があるなんて。
 まだ二年五ヶ月目なのに。
 靴底修理をすれば十年でも二十年でも履ける革靴と比べると、あまり
に割高。
 安いスニーカーをこまめに買い直した方が得かなあ。
 でも、靴は二足歩行の原点だしなあ。
 壊れたのは足型計測してもらって買ったので、また計測し直してもら
って、同じメーカーのを買おうか。
 だけど、マラソンシューズみたいな、華やかでカラフルなのに心惹か
れるしなあ。
 結局、予定どおりデパートに行った。
 去年改装オープンしたそのデパートのスポーツ売り場には、ウォーキ
ングシューズを集めたコーナーができている。
 連休はざまの平日だというのに、三、四人いる店員はみな接客中。
 売れ筋商品なのね。
 ようやく手が空いた男性店員を見つけて、どう選べばいいか訊ねると、
「まずは、お好きな色で選んでみてください」
 と言われた。
 戸惑いつつ放浪する私の横から、
「この三つは、同じデザインで足幅が違うんです」
 などと説明してくれる。
 が、私は、
「あっちを見てみます」
 地続きだが、デパートの店員は管轄外らしいブランド・コーナーに足
を踏み入れ、彼を振り切った。
「どうでしたか」
 そこの女性店員が迎えてくれた。
 さっき応対してくれた店員だ。
 初めに全体を見て回った時、彼女に、こういう時に履く靴を探してい
ると言ったら、瞬時に一、二足を指差し、勧める理由も明快で、そのま
ま、そこで選んでもよかったが、
「あっちも見て来ます」
 と一旦そこを離れたのだ。
 彼女に、私に合うのを選んでくれるよう頼んだ。
 靴下の上から私の足を触ると、
「スポーツをされていましたか」
 私の足の裏側は筋肉がしっかりついていて、スポーツ選手に多い足裏
なんだとか。一方、足の左右への可動域は狭い。
 そういう私向けに、二足、選んできてくれた。
 最初に履いた方が、足のフィット感と靴底のクッションが良い。
 ただ、ピンク×グレーのコンビの、グレーの面積が多すぎるのがなあ。
 二足目の水色の方が、爽やかで、好き。
 しかし、靴は色ではない。
 私が男性店員を敬遠したのは、そこだな。
 色も大切だが、履き心地が最優先でしょう。
 そういう私に、
「まずは、お好きな色で選んでみてください」
 というのは最悪のアプローチだったってこと。
 ピンク×グレーの購入を決意した。
 というのも、この配色がだんだん素敵に見えてきたのだ。
 なんて、いい加減。
 でも、それでいいのよね。