ガラケー、がんばっ

 アウトドアのスポーツウェア・ブランドが一つ消滅した。
 デパートの売り場も消滅。
 顔馴染みになっていた販売員は、別のデパートで別ブランドの販売に
携わるそうな。
 春夏秋冬それぞれのシーズンに入り用の製品を一通り揃えてしまうと、
あとは売り場に行ってもたわいない雑談の相手をしてもらうばかりで、
彼女の売り上げに貢献することのほとんどない冷やかし客になって久し
いが、嫌な顔もせず相手をしてくれて、良い気晴らしのひとときをもら
っていた。
 最後のさよならは、彼女の最終出勤日の週に言おう。
 が、彼女はいない。
 それも人生である。
 ところが、翌週行くと、彼女がいる。
 倉庫から残りの商品を引き上げ、あとは退出あるのみ、というところ
に、私が偶然行き合わせたらしい。
 閃いて、写真を撮らせてもらった。
 隣のブランドの男性販売員も顔見知りなので、二人をケータイで撮影。
 ただ、それを、どこにも、誰にも、私のパソコンにすら送れない。イ
ンターネットのオプション契約は、海外旅行の時しか、しないのだ。
「赤外線通信できるのなら、写真を送れますよ。送ってくれませんか」
 えっ。おお。赤外線!
 電話番号の交換は、相手の番号を聞いて入力し、すぐに電話、二秒切
り、という方法を取っていたので、ついに、これしかない、という必然
で赤外線通信にデビューするのね、私。
 楽しんだ。
 ただ、隣のブランドの販売員はスマホで、送っている途中に中断する
ことが何度かあったし、届いた写真は、
「うーん、どこやろ・・・」
 格納場所が見つからない様子。
 改めて、私はケータイで十分、と思ったものだった。
 呼吸器系のアレルギーで通院した日、医者に、皮膚のアレルギーが増
えてきているのは、よく言われているように防腐剤や合成着色料などの
食品添加物が原因ですかね、と話を振ったら、
「添加物も、昔のような毒々しいのはなくなって、安全になってきてい
る。不必要な物は、時と共に淘汰されるんですよ。ポケベルがそうでし
ょ。ガラケーも」
 その場では頷き、あとで調べたら、ガラケーって私のケータイのこと
じゃん。
 それが何を意味するかを正確には知らず、でも言葉は知っているとい
う、それなら知らない方がましという知識になっていたと発覚した瞬間
である。
 それはいいとして、ガラケーは消え去る運命ですってかい。
 外出中、電話と、短いメールが打てればいい、というのは異端だと。
 そうなんだ・・・。
 でも、本当にそうなのかなあ。