自分を大切にする

 メールマガジンは、配送手配してから実際に配送されるまでに時間差
がある。だが、前回は完了までに十六時間以上かかった模様。
 実は夜になっても配送されていないと気がつき、メルマガサイトに問
い合わせ、再送もしようか、と考えた。過去に一度そうしたことがある。
でも、思うにとどめた。
 我ながら進歩したなあ。
 私は約束はすっぽかさないし、五分前までには到着するし、メールは
来たらすぐ返事する。
 それが人の常識、とは言わない。
 ただ、たとえば、二十人足らずしか来なかったのに、百人以上集まっ
て大盛況だったなどとぬけしゃあしゃあと言える人は信じられないし、
「その方が楽しいやん」
 と笑顔で言われると、もはや理解不能
 要注意リストに分類する。そうすれば、次からは話半分で調子を合わ
せられて、私も幸せ。
 ところが、『Youは何しに日本へ』のテレビ番組を見て、私は本当に
驚かされた。
 空港で外国人になぜ日本に来たのかを聞き、一人で自転車旅行をする
とか、行き当たりばったりに旅すると言うので、テレビクルーが同行し
て撮影してもいいかと訊ね、相手が了承してくれると、後日、約束した
待ち合わせ場所に行くのだが、相手が現われない、電話も通じないこと
がままある。
 え。なんで、悪びれずにそんなことができるの。良心は痛まないの。
それもテレビ局との約束だよ。
 そっかあ・・・いいんだ。
 考えてみると、私が時間に遅れず、メールなどにもすみやかに返答す
るのは、相手を心配させたくないからだ。気配りの行動。胸を張れる。
 けれども、約束をすっぽかす人は、自分自身の本当の気持ちに従って
いる、つまり、それだけ自分を大切にしている、と見ることができるか
も。
 ということは、私の優等生の振る舞いは、私自身を本当の意味では大
切にしていないということなのか。
 確かに、自分がされたら嫌なことは、人にしない、という発想だと、
私が規範を見せるから、あなたも真似してよね、と心が動く。
 だって、あなたが真似してくれないと、私が傷つく。
 あ、でも、もしそうしてくれなくても怒らないからね。心密かにがっ
かりするだけだから。
 なんか回りくどい自己防衛だなあ。
 自分がしたいことより、相手から傷つけられないことに心が向かって
いる。
 やーめた。
 前回のメルマガ配信も、遅配は私の管轄外。第一、間違いなく着いて
くれさえすればいいのである。
 ということで、楽観して熟睡。
 翌朝七時十八分に配送完了メールが届いていた。