安い理由

 私はモノクロのレーザープリンターを使っている。
 トナーの印刷可能枚数は三千枚が目安らしいが、一年に一回買い替え
るサイクルになっている。
 今年もその時期が近づいてきた。
 今回は、初めて感光体ユニットも交換することになりそうだ。
 でも、アマゾンでは買わない。
 買い換え時期が冬で、寒い中、いつも行っている家電量販店まで出か
けたくなくて、アマゾンなら値段が安いし家まで届けてくれる、と買っ
てみたら、トナー切れ間近になると印刷の黒色がかすれた濃淡になるし、
用紙に引きずったようなあとがつく。
 すぐに、いつもの家電量販店で新品を買った。アマゾンより何百円か
高かったが、最後の最後まで綺麗に印刷できて、ニホンの技術力に惚れ
惚れ。
 じゃあ、アマゾンで買ったのは何だったの。
 再度サイトを見てみたら、リサイクルトナーとは書かれていないが、
さりとて「純正」表示もない。私が勝手にメーカーの純正品だと思い込
んだのだろう。
 外国製の調理器具を空だきに近い状態にしてしまい、青ざめてお客様
窓口に電話をした。その際、その代理店以外の通販サイトだと同じ商品
が安く買えるのはなぜかと問うてみた。
 輸入しているのはその製造国の品質チェックをクリアした商品だが、
日本の基準では不合格となる物もあり、そういうのはデパートや正規輸
入代理店で販売しないという。
 そういうのが安値で流通しているわけね。
 ブルーベリージャムに黴が生えた時は、特に湿度が高いとそうなると
いう説明を受け、ついでに質問したら、ブルーベリーはアメリカからの
輸入品だがジャムにすると記載する必要がなくなるので表示していない
と教えてくれた。
 適切な相手に適切に質問すれば、正しい情報を教えてもらえるのは嬉
しい。
 けど、予め事実を提示してくれたらもっといい。
 だって、事実は悪くない。
 正しい事実を知れたなら、その上で、これは品質優先で高いのを買お
う、こっちは値段優先、と選択して、あとで後悔することもない。
 みんな、そう望んでいる、と思っていたら、どうやら真実を知りたく
ない人もいるらしいと、先日、化粧品売り場で一週間のうちに二度も肌
チェックをしてもらうことになり、恐縮する私に美容部員が言った言葉
から気がついた。
 客の中には、どうせ自分の肌の状態が良くないのはわかっているから、
わざわざ調べてもらう必要はない、化粧品だけ売ってくれればいい、と
いう人が結構いるそうな。
 真実を知るのは、心に痛いのだろうか。