起き上がりこぼし

 赤ん坊には、起き上がりこぼし。
 それも、私が持っていたようなプラスチック製。
 写真の中で、幼き日の私が畳の上で腹ばいになり、両手を広げて飛行
機の形に身体を反らせている横に写っている起き上がりこぼしは、我が
人生の一番最初のページに刻まれた記憶である。
 写真に写っているのを私自身の記憶にしてしまっただけ、という可能
性は考えてみた。
 写真は白黒。当時、父は現像室を作って自分で現像していたのだ。で
も、起き上がりこぼしの真っ赤な服の色を私は今でもはっきり思い出せ
る。強い赤色は0歳児の脳が記憶したくなるような色だったのだろう。
 先日友が出産して、この個人的なノスタルジーが芽を吹いた。
 出産祝いはこれしかない。プレゼントにかこづけて我がノスタルジー
を満たさせてもらおう。そうしないと、私の心が落ち着かない。
 同じのはないだろうけど、似たのを探しに行く。
 ない。
 メーカーに問い合わせて卸している店を教えてもらうが、その店でも
売っていない。
 アマゾンでは見つかった。
 アマゾンかあ・・・。
 祝いの品は、朝一番に相手に届くのが礼儀。
 アマゾンで注文して、午前中に届いた試しがない。
 熨斗のオプション付きにしたから配慮してくれるかなあ。
 期待を込めて、購入クリック。
 翌々日。
 配達状況サービスは、朝一番から「配達中」。商品所在地はごく近隣。
 期待が高まるが、午後八時になっても「配達中」。
 業を煮やして電話をかけ、三十分以内には配達されるようですと確約
を得るが、三十分以上経っても配送完了にならないので、再度電話。
 この押しが功を奏したのか、今先方にお渡しし終わったということで
すと返答されたが、一日中まだかまだかと配送状況を調べさせられた私
は、落胆しきり。
 十二時間以上「配達中」表示が続く荷物の詳細情報って、どうよ。
「近くの配達店に到着」が十時間続いた方が、変に気をもたせられるよ
りよっぽど許せると思う私は非日本人的かなあ。
 ガス会社にガスコンロの部品交換を頼んだら、部品は入荷したが仕事
が混んでいてすぐには行けない、と言われた。
 いいですよお。
 三日後を提案され、それを遅いと見るんだ・・・と驚かされた私は、これ
また非日本人的反応だっただろうか。
 客は電話したらすぐ来てほしがるそうな。
 なんと身勝手。
 あ、でもそう感じるなら、アマゾンが丸一日「配達中」表示だからと
言って苛立つのは変か。
 う〜ん。ジレンマ。
 何にせよ、アマゾン購入は自家需要に限ると決めた。