胸を張って、ピンク

 先日、脚立の三段目から手を目一杯伸ばして電灯の蓋を開けようと格
闘しつつ、そう言えば脚立の三段目以上には上がらないのは常識という
記事に驚いて切り抜いてあるなあ、と思い出していた。
 グロー球を取り替え、数日後。
 溜まる一方だが一度も見返したためしがない紙の資料をなんとかせね
ばと、とりあえず手近なファイルを手に取ったら、件(くだん)の記事
と再会。
 私の記憶は間違っていた。脚立は天板をまたがない、はしごは上から
三段目以上にのぼらない、というのが正しい内容だった。
 うろ覚えは、知識ゼロよりタチが悪いかも。
 それに、すぐに役立つよう手元にあっても、時間と共に古くなるのが
情報。 
 この際、中身も読み返さず、ばっさり全捨てがいいのか。
 情報フェチの私は、その英断には踏み切れない。
 だが、自分が管理できる量しか持たないすがすがしさは、服を整理し
て実感している。
 気に入った服以外を手放したら、コーディネイトに時間がかからなく
なった。数が少なくて迷えるほどの選択肢がなくなったせいだろうけど、
決断力が増したみたいで良い気分。
 なんで今まで思いつかなかったんだろうという組み合わせも発見でき
たし。
 私はピンクでいく、と腹が括れたのも断捨離の恩恵だ。
 英語を教えていた三姉妹の母親が四十を過ぎてもふりふりピンクが好
きな人で、若すぎるバッグを買ってきた時、私は一応、
「素敵ですね」
 と褒めた。
 が、陰で三姉妹にどう思うかと聞いたら、
「さあ・・・」
 やっぱり、いい歳の大人が引きずってよい趣味ではないと確信させら
れた。
 ところが、今回、服を整理して残った中にピンクのスカートがあるし、
捨てきれなかった綿のシャツ数枚もすべてピンク系。去年買ったのは懲
りずにピンクのセーターだし。
 私はピンク色が好きなのか・・・。自分で自分の心がわからない。
 でも、淡いパステルカラーは私に似合う。言い換えると、私はそれし
か似合わない。
 だって、私はパーソナルカラーが春。綺麗なピンクや黄色、ラベンダ
ー色こそが私を美しく見せてくれる。
 フリフリじゃないから、いいよね。
 手持ちの服を縮小したら、それが心底腑に落ちた。
 すると、人を見ただけで春タイプか秋かがわかるようになった。私が
属さぬ夏冬グループは夏か冬かまでは見極められないけど、正しくグル
ープが判断できれば、素人なのだから、十分だろう。
 情報に関しては、風のごとしと割り切って、保存をやめ、流れ去るに
任せたら、脳がしっかり記憶してくれるかなあ。