薬いろいろ

 私は、相変わらず考えている。
 睡眠薬で眠れるようになったと友が言うのを聞いて、薬以外の方法を
まず試した方が良いと思ったものの、友はそんな意見は聞きたがらない
だろうと予想でき、なのに言って、案の定、受け入れなかった一件であ
る。
 薬って何なんだろう。
 私は、アレルギーの専門医を探し当て、漢方薬を二種類処方されて以
降、めきめき体調が改善。この分だと早晩薬と縁が切れるのではないか
と期待が高まる。
 が、それは、
「無理やね」
 あっさり断定されて、大いに不満。
 けど、たまに鼻や喉に予兆を感じて薬を頼る事態が発生する。七月は
なぜか私のアレルギーがうごめき出す季節で、お守りみたいにたっぷり
処方してもらっていた薬は底が尽きそうだ。来週行ったら、処方しても
らわねば。
 一方、突然歩けなくなることを何度か経験した知人は、病院に行った
ら手術が決定。しかし、いろいろな偶然が重なり、手術なしの退院とな
った。その代わり、足の血流改善の薬を処方され、運動も勧められる。
 以来、毎朝、公園でラジオ体操の輪に交じり、それからしばしウォー
キングという日課が始まったが、それにしても薬は本当に効いているの
か、毎日飲む必要があるのかと思ってしまう、と彼女が言うのはすごく
よくわかった。
 効いているという確たる証拠が見えないと、誰でも不安になってくる
のではないか。
 その点、睡眠薬は、眠れなかったのが眠れるようになった、と効果が
目に見える。友もそう言っていた。
 知人は、足の血流改善の薬を飲み忘れたら、命取り。
 私は、体調に合わせて薬を飲んだり飲まなかったりできる分、恵まれ
ている。
 でも、自分の考え方の癖に気づけば睡眠薬を飲まずにすむ道が残され
ている友は、さらに恵まれている。
 自分の心と向き合うって、そんなに難しいことではない。自分はこう
いう時、こう考え、こう反応するんだ、という発見に青ざめることがあ
っても、それもまた快感。私はマゾっ気が強いのかなあ。
 なんにせよ、自分の思考を自分自身の管理下に置けたら、ずいぶん生
きやすくなる。八割方は成功したようなものだろう。
 けれども、二年ぐらいかけて緩やかに二キロほど太った私は、食欲を
自分に都合良く解釈する思考の歪みはしっかりつかめているが、そこ止
まり。思考の歪みはそのままだし、体重は落ちない。
 思考の癖に気づいただけでは道半ばにも至らないのであったか。
 なのに睡眠薬頼みの友を説得できると思っていたとは。
 浅はかだった。