人口減少の理由にされても

 前回、神奈川県海老名市の鶴指市議は謝罪したが負けたのとは違う、
と書いてから、いや、やっぱり負けたのだと気がついた。
 負けた側が負けを認め頭を垂れただけではだめで、勝った側の論理を
受け入れて初めて真の負けだと考えたわけだが、戦争で負かされたアメ
リカに憧れる特異な国民性が染みつきすぎたせいの勘違いだったかも。
 負けた側は、力で屈服させられただけ。その悔しさは憎しみや怒りと
なり、いつか相手をやり返す日を待つようになる。
 真の平和とは、ほど遠い。
 だからこそ、手間暇かかっても、互いの言い分に耳を傾け合い、勝ち
負けや敵味方の単純な二元論を越えられたらいいのに、と思うのだ。
 鶴指市議の消されたツイッターを読み返すと、彼の最大の過ちは、個
人的な考えをこの世の正義であるという体裁に仕立てたこと。それゆえ
突っ込みどころが満載。
 同性愛を報道のネタにしたら、当事者達はさらに優越感が出る?
 あなた自身が人の注目を浴びたい性格だから、みんなそう、と決めつ
けるんだ。
 同性愛は、生物の根底を変える異常動物?
 人類史の中で同性愛が普通に存在してきたことは、もう少し本を読ん
でいればわかるでしょうに。ただ、それを異常と定義したくなる気持ち
を分析すれば、そこから初めてまともな議論を開始できる。
 異常人間が多くなれば人類の破滅?
 世界の人口爆発をご存じないかな。あなたが気になるのはニホン人の
消滅なのでは。
 でも、「まじめな人間をほめる方法を考えろ」と続くから、七十過ぎ
という彼の年齢も考慮に入れると、人は結婚して子を産み育てるべしと
信じて生きてきたことがうかがい知れるのであった。そして、それを今
さら、他にも生き方があっていいと言われたら、自分の人生を否定され
た気になるという恐怖。
 彼に比べれば、十二月十日の岐阜県議会で、
「同性愛は異常やぞ」
 とヤジを飛ばした同じく七十代の藤墳県議は、あとで「同性愛を社会
全体が認めて拡大すれば人口減少につながる」と説明して、まだ自分の
思いを言葉にできているが、それなら、そう発言すべきだったし、それ
でもやっぱり人口減少と同性愛を結びつけるのは浅はか。
 結婚して子供を産みたい人達の方が圧倒的に多いはずだからだ。
 そういう人達が普通に望みを叶えられる社会になった時、同性愛者や
非婚者はむしろ感謝される存在になるのではないか。
 そういう人達のおかげで、子を持ちたい人が好きなだけ子を産んでも、
社会は適切な人口を保てることになる。