テレビの非常識

 平昌オリンピック開催中である。
 羽生結弦宇野昌磨がメダルを取った翌朝は、彼らの生のインタビュー
を見たくて、チャンネルを回した。
 各局の二人の奪い合いは熾烈だっただろう。しかし、それで使命が果た
せたかのごとく、インタビューの中身は表層的。
 そんな中、スペインのフェルナンデスとの関係について羽生が質問され
た。珍しい切り口だし、羽生の返答に興味津々。
 だが、質問したのとは別のアナウンサーだったと思うが、いきなり羽生
の言葉を遮った。話をそろそろ切り上げてほしいなら、そう仕向けてこそ
プロだろうに、別の質問で羽生の発言をぶった切った。
 にこやかに言葉を呑み込んだ羽生は、大人であった。マスコミはそうい
うもの、という諦念があるのかもしれない。
 いち視聴者の私は、マスコミの横暴に呆然。しかも、そんなにまでして
次のコーナーに進めて見せられたのは、政治家らのどうでもいい個人的感
想。
 嘆きしかない。
 カーリング女子の熱戦でカーリングの体験レッスンへの参加者が急増し
ている、という情報番組の一コマでは、スタッフの男性がひと家族に混じ
って体験する様子が紹介されたが、このスタッフ、石を滑らせる体勢にな
ってしゃがむと、お尻が丸出し。
 見たくない。不愉快だ。
 スタジオからは茶々を入れる言葉が入るも、性懲りもなくその男の後ろ
姿をアップで写す映像が続く。
 だいたい体験レッスンを紹介しに行くとわかっていて、そんな格好で現
地入りするのがおかしいだろう。周りの人にも失礼。
 その場で、あ、まずい、と気づいたのなら、カメラマンは前から映せば
いいが、その機転も配慮もなし。
 ところで、きのう、NHKの『わろてんか』の放送で、好意を持ち合っ
ている男女が雨の中で会うシーンが出た。
 出た、と私は思いましたね。
 だって、雨の中、傘を差して立つ女性に気づいて駆け寄る男。
 案の定、女性は自分の傘に男を入れてやろうとしないし、男も、とりあ
えず雨宿りできる場所に女を連れて行こうとするでもなく、その状態で会
話が開始。
 もし、男がずぶ濡れになるのを無視して喋り続ける神経の女性がいたら、
そして、まずは女の手を引っ張って軒の下に移動しようとしない男がいた
ら、その鈍感さゆえに、この相手は付き合うに足らず、と判断しあうのが
この世の普通だろう。
 なのに、恋愛ドラマの雨のシーンは、いつもこの陳腐さ。
 意見する役者はいないのか。
 テレビは不思議だ。