高齢化第一位の理由

 先日、フランスのテレビニュースで高齢化が話題になった際、急激な高
齢化が予想される上位の国が紹介されたが、なんと、第一位はニホンだっ
た。
 いや、そうだろうと想像できていたから、案の定、と言うべきである。
 並み居る先進国を抑えて高齢化予想の第一位を獲得したニホン。
 ニホン人の肉体や内臓が特別なわけはないから、これはもう、医療の恩
恵を受けて長寿が実現している国、と見るのが正しいだろう。
 ニホンの医療が一番優れている、ということではない。優れた医療の恩
恵を受けられる人の数が多い、ということである。
 それを可能にしてくれているニホンの社会保険制度。
 そして、来る者拒まずを使命とする医療機関
 ところで、テレビを付けたら、戦時中、大陸でロシア兵に強姦されて身
籠もった女性達の報道特集をやっていた。彼女達は違法な堕胎手術を受け
て出産を回避した。この事実が公にならなかったのは、実は国が異国人の
血が混じった子を産むことを阻止したがったからだ、という証拠の文書が
出てきたりしたのだが、私が目を奪われたのは、女性達が可哀想で手術を
引き受けたという医師の一人が、現在、百歳だったか百一歳で、座ったま
まだが聡明に過去を語ったことだ。
 ロシア兵に犯されそうになったが難を逃れた、と言う女性は九十歳近く
であったか。肌の色艶も良い。
 人はその年齢ぐらいまで元気でいられるものなんだ。
 報道の内容とは全然関係ないことを、この人達を見て、私は思ったので
あった。
 周りを見回せば、そうでない人達の方が圧倒的だというぐらいわかりそ
うなものなのに。
 人は、希望を見たら、稀なこと、と思ったのでは諦めるしかなくなるか
ら、普通にあり得る、誰にでも、と思いたがるものなのだろうか。
 もっとも、「希望」という言葉の意味自体がそういうものなのだが。
 問題は、身近な人が体調を崩した時に、この希望が意識下から浮上して
きて、希望が根拠となり、八十歳台ぐらいであれば、まだその年齢なら、
ちゃんと医療機関にかかれば再び元気になれる、と期待しそうになるかも
しれないことだ。
 一方、本人自身は、からだに異変を感じた時、そこまで先の希望を抱く
以前に、まずは今の不穏な苦しさを取り除いてほしいと切望して、救急車
を呼んでくれ、と言うであろう。
 私の友達のおじいさんと、私の身内の一人がそうであった。
 どちらも八十代前半。
 そして今、どちらも入院が月単位で継続中で、果たして退院できる日は
来るのかどうか。