言葉への責任

カメラを止めるな!』は観ていない。
 しかし、低予算制作、二館のみの上映で始まったのが、その後大化け
したことも、劇団の主催者が劇の内容の盗作だと主張したことも知って
いる。
 坂上忍が司会を務める昼のテレビ番組で、これが取り上げられていた。
 映画と劇の対立点を比較するパネルを見つつ、坂上忍が意見を述べた
り疑問を呈したり。
 なぜか威圧的な表情と声なのは、それが昨今の彼の専売特許のようで
ある。
 笑わない目。
 これが上司なら、まずはそういう態度で説教しておいて、最後の最後
に友好的な口調になり、剛と柔の落差の激しさで部下の心をつかむ術で
あるとして高く評価されるかもしれないが、手垢がついているし、最初
に意味なく怒ったような口調で迫られた時点で、私なら、即、拒否反応。
こんな上司は尊敬できない。が、話が逸れた。
 私が唖然とさせられたのは、坂上忍が問題の映画も劇のDVDも観ず
にカメラの前に立ったとわかった時だった。
 並み居るコメンテーター達も、みな同様。
 自分の五感で確認していないことを断定口調でぺらぺら喋っていると、
普通は、自分自身が不安になったり羞恥を感じたりしそうなんだけどな
あ。
 こういう番組は分業で、スタジオの人達は、お膳立てされた資料や情
報を打ち合わせ通りに語る、その語り方にプロの技を発揮すればいい、
ということかもしれない。
 それでも、ふと空しさを感じることはないのか。
 今回は芸能という馴染みの分野でもあったのだから、事前に両方を観
ておけば、自分なりの見解が生まれ、語る言葉はもっと重みを増したは
ず。
 なのに、平気で「観ていないけど」と言える精神。
 下手に観て、打ち合わせと違う感情を抱くことになったりしたら困る、
と自戒したのか。
 テレビの前で綺麗な打ち上げ花火を上げることだけを求められている
としたら、それって操り人形。
 真の主役は花火の仕込みの側だということになる。
 その質が、花火の出来を左右する。
 全米オープンテニスで優勝した大坂なおみへの取材のひどさがSNS
で取り沙汰されていると読み、Yahooニュースの本文も読んだが、一体、
どんな会見だったんだろう。
 動画を見つけた。
 取材陣の一人目が質問した時点で見るのをやめたくなるような約三十
五分だった。
 素人でももう少し実のある質問をする、と言いたくなる軽薄な質問ば
かり。
 日大の元アメフト選手、宮川泰介の記者会見が懐かしかった。