先日、岡山の産直市が立ち、葡萄を買った。
『紫苑』
知らない品種だ。
でも、だから私は買ったんだと思う。
昔、葡萄は実がもっとずっと小さくて、口に入れたら唇をしっかり閉じて
いないと汁が弾け飛んだ。そんな葡萄が私は好きだったが、品種改良される
と、どんどん実が大きくなり、種なんて、とうの昔に完全に消失。そうなっ
て出回るようになった葡萄を、私はもう積極的に買って食べたいとは思わな
くなった。
『紫苑』は同じように実が大きいが、赤系で、初めて見るがゆえの警戒心は
あるものの、よく知る品種でないがゆえに、やっぱり秋に一度は食べておき
たい、という目的を達成するには良さそうに思えた。
動機がそうだと、期待は低くなるのであったか。
食べたら、美味しくて、気持ちよく驚かされた。
出荷時期が十月下旬から十二月上旬の、初冬の葡萄だとか。
もちろん、私の舌に郷愁のある、あの小さい濃い紫色の葡萄を凌駕する味
だとは思わないけど、また見たら、買いたい。
そう思えるということは、私は、必ずしも過去に固執しているということ
ではないんだな。
ちょっとホッとする。
この好天を利用して、衣替えした。
時間はそんなにかからない。
空気が通る隙間のある収納ボックスの一つ一つに、これは家用、これは外
用、など仲間ごとにまとめてあるので、その中身を箪笥の引き出しに移し、
引き出しの中のを仲間ごとにまとめてボックスに移せば終了。その程度には
断捨離してある。
ただ、不完全。
たとえば、ダウン・ベスト。
着ないから、もう手放さねば、と思いつつ、ぐずぐず持っている。
暖房を入れるほどではないけれど、朝晩冷えるようになったので、そうだ、
部屋着の上に羽織ってみたらどうだろう、と閃いた。
しかし、んんっ。そんなに暖かくない。
ならば、迷いなく捨てられるな。
捨てる候補に、もう一枚、ダウンの長袖のジャケットがある。
万一の時用に旅行に携帯できる薄さは魅力だが、袖口が擦れて、繕うこと
ができない。そんなだらしないのは、旅行の時にも持って行かないから、こ
れも捨てよう。
あ、でも。
このジャケットの上にベストを羽織ったらどうかしらん。
やってみたら、あったかい。
しかも、ジャケットのベージュゴールドと、ベストの水色は、色合わせも
抜群。
ついに断捨離が決定されたあと、もう一度活躍の場を得た、二着のダウン。
よかったね。
私も満足。
断捨離は難しい。