トイレ掃除

 今年は、個人的には、やたら「トイレ掃除」という言葉と出くわす一
年だった。
 一冊読んで気に入ったら、その著者の本を軒並み読むからなのだが。
 小林正観は言う。
 トイレ掃除をしたら、鬱病が治った人達がいる。臨時収入が入った人
達がいる。トイレ掃除は事実としてすごく力があるようだから、損得勘
定でやるといい。
 ふーん、面白そうな発想だなあ。
 だが、彼の著書の中で何度もこの話と出合ううち、因果を含めた説法
に飽きてきた。
 こうすれば、こうなる。
 黄色い財布がはやった時は、黄色い財布を買えば、金運、恋愛運、仕
事運、家庭運があがる、と開運の大判振る舞いだった。
 今が旬の「断捨離」関連の雑誌でも、実践したら、「恋人ができた、
臨時収入があった」等、載っていて、私はしみじみ深い既視感に襲われ
る。
「こうすれば、こうなる」の「こうなる」内容が運気上昇や開運だと、
人は、つい信じたくなるのかも。
 でも、そういう餌に釣られる自分を想像すると、ああ、浅ましい、と
げんなりする。
 それに、全員に「こうなる」素敵な未来が訪れるわけでもあるまい。
 と思ったら、正観は、一所懸命トイレ掃除しても、お金に恵まれない
とくってかかってくる人には、「不平不満の心でしている場合は、それ
で当然」と諭すそうで、なるほど、ちゃんと立派な口封じは用意されて
いるんだ。だって、望んだ未来にならなくても、責任はトイレ掃除や黄
色い財布の提唱者になく、すべては自己責任、と言われたら、口をつぐ
むしかない。
 まあ、要は、私は、トイレ掃除に異論はないが、損得勘定でせよと言
われると、する気が失せる、へそ曲がりみたいってこと。
 ところが、無償のトイレ掃除活動をNPO法人にまで高めたイエローハ
ットの創業者、鍵山秀三郎は、
「掃除をしたから、こうなるという約束も保証もない。しかし、何も成
果を得られないことをやるという大変なことをするところにこそ、喜び
が生まれてくる」
 と述べていた。
 斉藤一人は、
「お金は関係ない。トイレだけでなく家も掃除した方がいい。それで気
分が良くなればお金も入ってくるかもしれないが、良いことをして損は
ない。そのぐらいの常識がないと、お金は入ってこない」
 あな、嬉し。
 私のような考え方でもいいのね。へそ曲がりってことでもないのね。
 さて、今週末は、もう新年。
 トイレほか、特に私の部屋の大掃除を済ませて、すがすがしい気持ち
で新年を迎えられますように。
 頑張るぞぅ。ィエぃ!