旅行の日程

 私は、フランスは、ブルターニュ地方に住み、次がパリで、住んだ期間は
パリの方が長いが、今も交流があるのはブルターニュの人達だ。
 その中の一人、アニーと去年のクリスマス前にインターネット電話で話を
したら、
「息子が結婚する」
 アニー夫婦の敷地内に家を建て、幼い子供もいるが、籍は入れていなかっ
た二人が、生涯別れないと確信が持てたのか、結婚を決意。
「式のあと、息子夫婦は二週間ほど休みがもらえるはずで、そのあいだ、私
は孫の世話から解放してもらう」
 フランスには自宅で数人の子供を預かる保育制度があり、それを利用して
いても、来週から私はバカンスです、と保育士に言われたら、
「かあさん、お願い」
 とアニーが当てにされる日がさらに増える。
「私だってバカンスがほしい」
「そうですよね」
 すると、アニーが言った。
「ねえ、一緒に観光しましょ。そうだ、結婚式に出席してよ。あ、でも、前
日には親戚が泊まるから、あなたの部屋がない・・・」
 アニーの一番上の娘は、去年の七月、家族で来日した。
 私は彼女を通じてアニーと知り合ったのだ。
 日本から帰る前に、
「フランスにはいつ来るの」
 と聞かれたが、ほかにも私が来るのを待ってくれている人達がいる。
 そろそろ行かねば。
 でも今年は・・・。
 じゃあ来年ならいいのかと自問すると、重い腰が上がらないだけの自分自
身に気づく。
 家に泊めてもらう前提の旅は恐縮だが、それでいいと言ってくれるのなら、
アニーに時間ができる次の機会を待つと言ったら、
「親戚はどこかに宿を取ればいいんだわ」
 えっ。
 けど、アニーは次女の二人の子供の面倒も見ている。それは、結婚式のあ
とも、いつも通り頼まれるのではないか。
「クリスマスに家族が集まった時にみんなに話すから」
 私は行くことになるのか。
 もしそうなった場合、行くことを知らせないのは大いなる不義理となる友
人夫妻がひと組。が、彼らからのクリスマスの手紙に、多忙続きで来年も日
本への旅行は実現しそうにない、としたためられていたので、今回は泊めて
もらうどころか彼らと会うのも難しそうだ、とアニーに伝えておいた。
 年が明け、メールが来た。
 この夫婦と話し合った結果、私はまずこの夫婦宅に泊まり、彼らと一緒に
アニーの息子の結婚式に出て、私はそのままアニー宅へ、ということで、そ
の日程も記されている。
 旅行ってこうやって決まることもあるんだ。
 あるのか・・・?
 不思議な感覚。