時代に遅れる幸せ

 遠方に住む友に、何年も前からSkypeを使えるようにしてよ、と頼ん
でいた。
 だが、してくれない。
 で、やっぱりそうしてくれていないことがわかった。
 久しぶりにケータイに電話がかかってきて、出た途端、
「五分以内だと無料だから、五分経ったら、切ってかけ直すからね」
 と言われたのだ。
 でも、
「じゃあ、かけ直すね」
 と言って切れた時、まだ三分半ぐらいしか経っていなかったので、数
十秒後にかかってきた時にそう言ったら、時間を計りながら喋っていて、
彼女も気づいていたそうな。
 五分を越えないように、と思うと、つい、早めの対応になってしまう
のかも。
 彼女は、来月、同窓会を兼ねたクルーズ目的で、こちらの方面に来る
ことになったが、前日入りするから会えないか、と言う。
 じゃあ、うちに泊まったら。
 彼女から、最寄り駅から電車に乗りたいおおよその希望時刻を聞いた
ので、電話のあと、ささっとインターネットで調べて、乗り継ぎも考慮
して、候補を二、三、メールで送った。
 助かった、ありがとう、と返信が来る。
 彼女は、そういう検索は苦手なのだ。
 スマホなのにね、と嫌味を言いたくなる私はガラケー。インターネッ
トはiMacのみ。
 Skypeは、当然、パソコン上。
 ところが、していた、と言わねばならなくなった。
 フランスの友人と、あした、Skypeで話しましょ、と約束していた前
日、Skypeできるか確かめておこうとログインしたら、入れない。最新
バージョンを入手せよ、とのことだが、七年前のOSは対象外。
「じゃあ、書くのに時間がかかるけど、メールで」
 はい。私のパソコン環境が今のままのあいだは、そういうことでお願
いします。
 そんな次第で、来月来る友達にSkypeを勧めていたのは、私の事情で
不可能になった。
 けど、あれ。
 彼女のスマホは三年前にskype環境からはずれていたのか。それなら
そうと言ってくれたらよかったのに。いや、そういうことに関係なく、
彼女は一度も試したことがなかったのかも。
 私がSkypeできなくなったと知ると、東京のフランス人の友達が、
「LINEは」
 と言ってきた。
「それかWHATSAPP。ヨーロッパで標準的なんだ」
「私のOSじゃあ駄目なのよ」
 私は、喋るように書くのは苦手。短い単語の応酬は、書くのも見るの
も疲れる。
 できるのに、しない、ではなく、できないOS環境は、私にとっては救
いかも。
 先日、友とメールをやり取りした際、私から送った一通の字数を計算
したら、四百字詰め換算十一枚だった。
 メールも、こういうのが私の性に合っているのだ。