それを買って満足しているなら、その後、セールが始まっても、同じの
が出ているか、出ているならどのぐらい値下げになったかを見に行く必要
はない。
でも、確認したくなる。
それに似たことを、米に関して、した。
今週の火曜日。
仕事帰りにスーパーマーケットに立ち寄った。
お腹は空いていないが、何か食べないと心が治まらない気がしたのだ。
ついでに台風十号対策で食材も買っておきたい。
しかし、夜十時ともなれば、生鮮食品は皆無に近い。
茄子はあるが、普段は見ない長茄子で、しかも高い。
そのせいで売れ残ったのか。
だいたい、夜、生鮮食品を買うのは、鮮度の点で愚行だ。
それでも、台風の接近を思い、値段には目を瞑ることにした。
ほかにもあれこれ選んだら、仕事帰り買って帰るには多すぎる量になっ
た。
アイスクリームはどうしよう。
軽くても、嵩張る。
諦めた。
近くに米のコーナーがあり、足を伸ばした。
ない、と思った米が、ある。
五キロのが八袋。三キロのも同じぐらい。
米の搬入機材の前に男性。そして顔見知りのレジの女性が遠巻きに棚を
見ている。
レジの女性が、今、この担当者が米を出したところだ、と言った。
値札を付ける前に客が奪うように買っていったと。
だが、その波も一段落したのか、客は私のみ。
「昼間、米はないかとどれだけ聞かれたことか」
「今出したばかりの時に来て、運がいい」
言葉で煽って客を焦らせ、判断力を鈍らせて、自分の意のままに客に物
を売りつけようとする悪い営業マンの常套句そのものなので、私はふっと
笑った。
もちろん、彼女は私をそそのかそうとしたのではなく、素直に思ったこ
とを口にしただけだ。
米不足の話になり、私が、去年の猛暑が原因で米不足になっているのな
ら、今年も猛暑だったから来年も不作になるはず、と言ったら、
「去年は稲刈りの前に雨が降って、稲から根が出て、売り物にならなくな
った。今年は雨の前に稲刈りを始めたから、大丈夫」
と彼女。
これまでに十分暑かったので米の生育は足りていて、稲刈りを前倒しし
ても問題ないのだとか。
初めて聞く説明だったが、納得がいった。
家にはあと一回炊く分しか米がない。
五キロのを、ひと袋買った。
通常より八百円ほど高かった。
翌日。
別の銘柄のが少し出ていたが、私が買ったのよりさらに六百円ほど高い。
そして今日。
新米が五十袋以上出ていたが、さらに値段が高くて、そのせいか、売れ
ていない。
火曜日の夜、重くても、買って帰ってよかった。