エコ・カイロ

 何年かぶりで友に会った。
 会うのは久しぶりだが、去年の春に子供ができたことは知っていたの
で、子連れでも驚かない。が、日本人の理想身長の私よりさらに背が高
く、そのくせ異常にほっそりした体つきに、え、昔からそんなだったっ
け・・・?
 聞けば、身長一メートル七十二センチ、体重五十一キロ。
 が、「モデルの人はもっと細い」と言うので、え、比較の対象はモデ
ルかい。
 さすが、今どきの母親である。
 それが証拠に、下着丸見えのジーパン。
 若い子のそういう姿を見ると、うちの母親は「あんな格好をしていた
ら子供を産めない」と、いわゆる安産体型とはかけ離れた細すぎる体型
も込みで、我らが日本民族の子孫繁栄の鍵を握る娘達に不安な眼差しを
向けるのだったが、「母親になっても、そうみたいよ」と言ったら、ど
んな顔をするだろう。
 ----と、その結果を見極める前に、私自身の口から「それでいいの」
と女性の品格を憂う言葉が出てしまった。
 すると、「あ、これ? 腹巻きよ」。
 そして、おなか部分のポケットを見せて、「ほら、カイロが入れられ
るの」。
 なので、もし丸見えなのはショーツだと信じて妄想を膨らませていた
人がいるなら、さっさと目覚めましょうね。
 さて、話題は「何回も温めて使えるエコ・カイロ」に移った。
 中が透明ジェルで、小さな金属のかけらが入っているカイロ。
 私は「温めるのが面倒だし、あれは使えないわね」
 じゃあ、なぜ四つも持っているのか。
 去年の正月の三が日に、近くの店が、毎朝、先着三百名に日替わりで
記念品を渡してくれた中の一つだったのだ。母と一緒に二度並びしたの
で、二つではなく四つ手に入った。
 あさましくも「ただ」という言葉に釣られておきながら、どうせなら、
もっと良い物がほしいなあ、配る数を減らしたっていいんだから、と思
うのは、客の理屈。店は、私達のように並び直す客が目立ったことから、
集客効果はなし、と学んだのだろう。今年は取り止めになった。
 おかげで、家でのんびり過ごす正月になって、よかったんだけど。
 話をエコ・カイロに戻すと、私は否定意見だったはずが、友から「女
学生のあいだで、はやっているのよ」と情報を教えられると、
「・・・」。
「若い子にヒット」が魔法の言葉となって、思わず意見を撤回しそうに
なった。
 きゃっ、みっともない。
 ちなみに、四つもあるカイロ。アメジストの原石などを置く座布団と
して、立派に役立ってくれている。