119の次は120。そんな簡単な計算を間違えて200と堂々と書いた。
あとで気がついたが、文字通り、「後の祭り」である。
若年性アルツハイマー診断法の一つに、100から7ずつ順に引き算さ
せるものがあるそうだが、私は、結果が怖くて、チャレンジしたくもな
い。
それにしても、日本式の引き算がかなり難しい計算法だと、みんな、
知っているのかなあ。
フランスでは、100ユーロ出して59ユーロのものを購入すると、店員
は、まず1ユーロを客に渡して「60」と言い、それから10ユーロずつ加
えていって、「70、80、90、100」で、「はい、ありがとね」となる。
双方、お釣りの合計金額を知る必要はないのである。
今はレジの機械が勝手に計算してくれるから、そんなことはなくなっ
たが、59ユーロだからと気を利かして109ユーロ出そうものなら、変な
外人、と9ユーロ突き返されることも多かった。
人は易きに流れる。
今、私は、引き算の暗算は、フランス式のアレンジで生きている。
100引く59は、69、79、89、99と指を折ってゆくと4回なので40、残
るのは1だから計41ね、と数えるのだ。地球のどこかに、この計算法ず
ばりの国があったら、ぜひとも、迷える子孫として、移住を果たしたい
ものである。
今年六月、医師の父親からの勉強指導にストレスを覚え、十六歳の息
子が自宅放火と母子殺害で捕まったが、広汎性発達障害だとする精神鑑
定書が、先日、奈良家裁に提出されたという。その報道の際、一つのこ
とに意識が集中するのがこの障害だと、どこかのテレビ局のアナウンサ
ーが言ったのを聞いて、「え、それって私?」と思った。
短い時間に要点だけ伝えようとすると、真実がこぼれ落ちる。わかっ
ていて、短絡的にそう反応した私。要注意だぞ、と思っていたら、自分
は鬱病ではないかと紙上相談した人があげている理由の一つに、気がつ
くと痛いほど歯を食いしばって寝ている、というのがあり、その点は同
類で、マウスピースを予防策としている私は、「それは歯医者の領域」
と教えてあげたい気持ちになった。
で、思ったのだが、もしかしたら、「これこれの理由で、あなたの不
安は思い過ごしですよ」と説明していくと、心配することは何もなかっ
た、となる場合も多いのではないか。ただ、それを喜んでもらえるかど
うかは別問題だが。
病気は怖い。でも、“自分は病気だと思いたい病”が現代の流行り(は
やり)かも。
真性の病人の場合、むしろ、「病気じゃない」と言い張りたがる。
私は、そうだった。