延命治療

「炎上」はインターネットの世界に限ったことではない、テレビや雑誌
も同様だ、という意見を読んで、ふむ、そうだなあ、と思った。
 いっとき煽るように日本国中がその話題で持ちきりになったと思った
ら、ふいに立ち消え、よほど気にしていないと、そんなことがあったこ
とすら忘れそうになる。
 新聞の切り抜きを見返していたら、延命治療の読者アンケート結果が
出てきた。人工呼吸器を外し、末期状態の高齢患者を五年間に七名死亡
させた病院問題が発覚した直後のものである。
 あれから約半年。私なりにいつか考えよう、と思っていたが、深く考
えることもなく今日まで来た。
 それでも、私の中でうっすら思いは定まっている。
 簡単に言えば、「自分の命は他者のもの」という考えだ。
 自分自身が自分以外の人のものだなんて、そんな馬鹿な話はあるか、
と言われそうだが、私はそう考えるのがもっとも妥当なように思ってい
る。
 究極の状況に陥った時。もう命を絶ってしまいたいと思うような時。
それでも、肉体の存続を自らの手で断ち切る権利は自分自身にはない、
ということである。
 人は誰かのために生きているからだ。
 もし、この世に自分を必要としている人なんかいないと感じるなら、
まずは、自分自身のちっぽけな頭が導き出した結論にすぎないのではな
いかと疑ってみるべきだし、今いる場所から抜け出せば、新しい出会い
が見つかるだろう。気持ちも変わるだろう。
 自分のことばかり考えすぎて不幸になっている人に、一週間だったか
二週間、他人を喜ばせてくる成果だけを求める療法があるそうだが、試
してみてもいいかもしれない。
 この世にいらない人間なんていない。誰もみな、肉体の寿命が尽きて、
仕方なく退場するのである。
 ただ、その肉体が恒常的に激しい痛みを伴うような場合は、つらくて、
逃げ出したくなるかもしれない。それでも、心の力で立ち向かう。
 心。唯一自分自身のものと言えるもの。
 今まで失敗続きだったのなら、考え方を変えてごらん。成功できるよ。
 お金を悪だと思うのは、あなたが悪に変えたのだよ。
 喜びだと思う人は、あなたが喜びに変えたんだね。
 自分次第で100%どうにでもなるところが、必ずしも自分の思い通
りにならない肉体とは大きく異なるのである。
 意識がなくなった患者の延命治療に関しては、それをいつ中止するか
は、周りの家族が「もうこれで、ありがとう」と思えた時ではないかと
考えている。