一事が万事

 人は完璧ではない。誠実を尽くしても、ミスをする。大切なのは、万
一ミスが起こったら、原因を究明して、再発を防ぐことである。
 食品もしかり。購入商品に異変を感じた場合、それが賞味期限の改ざ
んや産地偽装など、故意の裏切りによるものでなければ、私は、あって
ほしくはないことだけど、人は完璧ではないので、何らかの理由でそう
なったのだろうと考えて、静かに廃棄する。ただ、もしかしたら同時期
に製造された他の製品でも同じことが起こっているかもしれないと思う
と、お節介気分が目覚める。
 豆乳の時がそうだった。最小サイズのを大量買いして冷蔵庫に入れて
おいたら、うち一つがパンパンに膨張した。冷えすぎて、凍ったのかな
あと思いつつ、コップに注ぐと、液はどろどろ。飲まずに捨ててから、
紙パックにフリーダイヤルの番号が載っていたので、電話をかけた。
 すると、私が述べた現象は、中に空気が入って起こるが、段ボール詰
めで出荷した製品を店で開ける際、ナイフか何かで傷つけたのではない
かと思われる、とにかく現物を分析させてほしいと言われ、菓子折を持
って訪れた担当者が引き取っていった。そして、その後、やはり製造過
程の原因ではなさそうだ、と報告を受けて一件落着。
 この一連の対応は迅速かつ気持ちのよいもので、食品メーカーは品質
にこれほどまでに神経質になるのだ、と敬服させられた。もっとも、現
物を取りに来た担当者に、私がいつも買っている店だけでなく、その隣
の店でも扱ってもらえると嬉しいと個人的希望を伝えておいたら、その
とおりになったものの、それまで買っていた店からは姿を消し、その原
因が私にあるとしたら面映ゆいのだが。
 それからしばらくして、不二家のミニチョコの袋詰めを買った。
 おなかが空きすぎ、待ったなしでエネルギー補給したくて買ったので、
すぐに開封
 と、冬なのにチョコが溶けている。別のを開けると、それも。次のも、
次のも・・・。
 袋には万一品質不具合の場合は現品を送れば代金と送料を送るとだけ
記して、電話番号は不掲載。つまりは、理由を究明する気はないし、ま
してや消費者に理由を説明する気はないと私には読み取れた。ならば、
申告の親切心を発動しても、真意は理解されず、後悔だけが残るであろ
う。
 私は空腹を押して、店に戻った。
 店の人から、メーカーの運搬時の温度管理がまずかったようだと説明
があり、私は交換より返金を希望し、他のメーカーのチョコを買い直し
た。
 その時から、私には、いつか今日あることは予感されていた。