ぬか漬けデビュー

 風邪を引いた。
 私より先に風邪を引いた友は、予期せぬ受胎をするも、授かりものだ
からと来年年明けに四男の出産を控えているため、二歳の三男に風邪を
移され鼻声になっても、薬を飲めぬ。が、鼻声を大底に自然治癒した。
 一方私は、先週火曜日に口を閉じていても喉がからからに渇く状態に
なったが、市販の風邪薬を飲むと木曜日に喉の炎症が消え、鼻水に移行
したので、このまま回復かと喜ぶも、金曜日に声が出なくなり、土曜日
に医者に駆け込む羽目に。
 鼻水咳痰で、未だに気力、集中力なし。
 この差は何? 悔しいなあ。
 ところで、風邪を自覚した火曜日。
 母に「晩ご飯は作ってくれなくていい」と予告したのは食欲がなかっ
たからだが、そのものずばりを言わないことが奥ゆかしさと心得る女性
の特質を発揮して「野菜もいっぱいあるから」と弁解のように言ったら、
その前の週、容器を買い、米屋で生ぬかも調達して、ぬか漬けデビュー
した私だったためか、母は私の言葉をぬか漬けにのめり込んだせいと受
け止めた。
 食欲がないから、ご飯にぬか漬けでいいとシンプルに説明しなかった
私が悪い。でも、ゴホゴホ咳をし始めるまで、私の風邪に気付かないと
は、一緒に住んでいて、一体、何を見ているんだか。
 私が髪の毛を切ってきたら、「パーマ、当てたん?」
「えっ?」
「ああ、天然パーマやったっけ」
 寝とぼけたようなことを言うぐらいだから、推して知るべしか。
 これまで私が手作りする漬け物は、冬場の白菜の塩漬けだけだった。
美味しくて、すぐに食べ切るのは良いとして、毎回大量に投入する塩の
量が気になり、ほかに簡単に野菜を摂取する方法を思案していたら、ぬ
か漬けを閃いたのだ。
 図書館の本やインターネットで調べると、一つとして塩と水の分量が
同じのがないのは、私なりの勘で配合を決定。野菜を三回捨て漬けした
のち、いよいよ初漬けのナスもキュウリを食べたら、うわっ、美味し!
 この季節でも室温二十度以上という我が家の環境のおかげもあるかも
しれない。
 嬉しくて、友へのメールの返答にぬか漬けデビューを自慢したら、彼
女はすでにやっていて、「実家からもらってきたぬか床に足しぬかした
から、初めっから美味しかったの。いいでしょう」
 うーん・・・。
 一から始めても十分美味しく漬かったので、今度どちらか選べるとし
ても、私はやっぱり「自分スタート」の爽快さかな。