同窓会

 社会人が長くなると学生時代の同級生と再会したくなるのか、二年前、
高校の同窓会があった。それも全クラス合同の盛大なる同窓会。
 偏差値が同じだと、感性もよく似る気がして、それが安堵だ。
 この同窓会後は、誰かが帰国したとか、新年を祝って、など理由をつ
けて各地で少人数の集まりが催されるようになった。
 が、要は飲み会で、飲めないし、何よりそういう場面で付きものの煙
草が、即、私の喉と肺への凶器となるせいで、私は参加しない。
 しかし、先日の高校三年のクラスの集まりは、クラスが主催する九州
旅行の打ち合わせが目的。言い出しっぺが九州からやって来るという。
具体案が決まったら、メーリングリストで同学年全員に告知して、広く
参加を呼びかけるそうな。
 総勢約二十名。ほとんどが、もと女子。
 打ち合わせ、ということなので、顔を出すことにした。
 幹事役を指名されたもと男子が、適当な店を知らないか、と事前にメ
ーリングリストで意見を乞う。
 誰も返事しないので、私が三、四件候補を書いた。
 返答はない。
 当日。
 幹事が、
「僕、イタリアンはあかんねん」
 空に向かって言う。
「チーズが食べられへんねん」
 そう言って、私が紹介した店が集まる方向に背を向けて歩き出す。
 もと女子の多さと、旅行の打ち合わせがちゃんとできる場所というこ
とで、私が提案したのはイタリア料理など洋風のレストランであった。
 飲み屋街に足を踏み入れた途端、どこからともなく煙草の煙。
 私は、喫煙可能な店の場合は帰らせてもらう、とそばにいたもと女子
にそっと伝えた。
 面倒な条件を言い出して、と言いたげな幹事。
「チーズが駄目っていうのを聞いてあげるんやから、菊さんが煙草が駄
目っていうのも聞いてあげないと」
 もと女子の一人がぴしっと言ってくれたが、禁煙の店は簡単には見つ
からない。
 私は咳が出始めた。
 もと女子達は飲み屋でなくてもいい、という雰囲気。
 が、ホテルの地下に、喫煙可だが、私達全員が入れる個室があること
がわかって、腰を落ち着けた。
 打ち合わせは五分で終了。
 三十分ほどで私の咳は収まった。
 酒が進むにつれ、幹事は耳が悪いのかと言いたいぐらいの大声になり、
その声で語る内容は、あいつは今どこそこで何をやっている、というよ
うな話。
 にこにこ聞き入る、彼の周りのもと女子達。
 この手の話題に興味を引かれなくて済むから同じ偏差値仲間だ、と思
っていたのに。
 同級生同士だと、この話題は宿命なのか。
 二次会のカラオケは辞退して、帰った。