店員の会話力

フランスから音楽のCDが届いた。
 前回話に出た二人とは別の友達が送ってきてくれたのだ。
 私がほしいと言った女性歌手のCDで、インターネットのおかげで、
手にする前からどんな表紙かもわかっている。
 けど、DVDが付いていた。
 最近はそれが当たり前なのかしらん。
 フランス製のDVDは二本目になるので、もう、今使っているiMac
いきなり再生しても不安はない。
 だが、一本目同様、まずは古いiMacで再生し、それから今常用のiMac
で観るという二段構えで臨んだ。
 と言うのも、実は、一本目は、旧iMacで見ていたら、途中で画像が乱
れたのだ。
 きっかり一分間。画面が突然水平と垂直の線で細かく切り分けられた
格子模様に切り替わり、一つ一つの正方形は好き勝手な色に染まってい
る。音は何とか聞きとれるも、その間の音質は非常に悪い。
 やっぱりフランス製DVDは日本のパソコンでは再生できないんだ・
・・。
 って、その画像不良の一分間以外はまともに観られたのだから、そう
いう判断はあり得ないのに、現象から導き出す結果がいつもとんちんか
んな私は、まあ、そう思ってしまったわけだ。
 少し落ち着いてから、たぶんDVD自体の不良で、もう一台のiMac
で再生すればそれがはっきりすると気づけたのだが。
 果たして、同じ箇所で同じ現象が起きた。
 今回入手した二本目のDVDはプロモーションビデオのたぐいだった
が、最後までまともに再生できたので、一本目が不良品だったことは、
もはや決定的。
 が、母に頼まれて近くのCDショップに行ったのは、この二本目を手
にする前だった。
 母が予約してあったのを代わりに購入した私はれっきとした客。それ
に、ほかに客はいない。
 私のDVDの一分間の画像不良について、店員に意見を請うた。
 こういう店で働いているからには、個人的な趣味も相まって、CDや
DVDの知識は普通の人以上、と期待したのだ。フランス製DVDのこ
とであっても、深い知識をもとに個人的な見解を述べてくれるはず。
 ところが、間違ったことを言って私を惑わせてはいけないという配慮
からではなく、単にフランス製なんて知識の圏外、という態度で話を切
り上げられてしまい、そういうことを相談した私が悪かったような気に
させられる。
 正解はわからずじまいでも、言葉を交わすことがちょっと楽しかった
ね、という会話に昇格させることはいとも簡単だったろうに。
 あ〜あ、聞いて損した。
 私は、不良品のDVDのことよりも悔しい気分になったのであった。