思考の硬直

 私は、星占いの惑星のシンボルサインを全部描ける。
 けど、火星のサインは男性のシンボルマーク、金星は女性のマークと
同じだとは気づけなかった。
 久しぶりに読み返した本の中でその記述に出合い、
「おお」
 感心するも、自己嫌悪たるや二倍である。
 で、思い出した。
 荷物が多い日は、荷物用と貴重品用の二つにバッグを分けた方が重さ
を分散できてラクになると考えた時、私は小さいバッグは肩掛けタイプ
しか持っていなかった。
 肩からずり落ちるのを何度もかけ直す仕草の優雅さを気取っていられ
ないシチュエーションで使うなら、やっぱり、たすき掛けタイプ。
 そこでシャンパンピンク色の牛革バッグを購入した。
 別のデパートで黒のバッグを予約中だったのは、入荷したのを見に行
った時点でキャンセル。
 代わりに、ゆるくギャザーが入ったフェミニンなキャメル色の革バッ
グを買った。ショルダー紐は短いのと長いのが二本が付いていて、長い
方は、穴の位置を変えると、たすき掛けになる。
 この、長さを調節するという知恵は、シャンパンピンクのバッグを買
う時、店員が「こんな風にショルダー紐の片方を反対側に引っ張ってく
ればツーウェイになるんです」とやって見せてくれたのにヒントを得た。
「普通のバッグでも長さ調節はできるのよね。知らなかった」
 友に言うと、
「えーっ。私なんて、買う前にアレンジできそうなことは全部試すけど」
 そうか。私は見たままを愚直に信奉しすぎるのか。
 ならば、昔、健康診断で市民病院に行った時、シャーカステンに貼り
付けた私のレントゲン写真にグイッと身を寄せ、医者が、
「んんん?」
 と唸るので、
「何か見つかりましたか」
 不安な声で聞いたら、
「あ、いや。首の骨が一つ多く見えたけど、違ったな」
 結局異常なしと言い渡されたのは・・・。
 友に話すと、
「んもーっ、完全にからかわれたんじゃない」
 やっぱりそう?
「菊さんは、人の言葉を真に受けすぎ」
 確かにそういうきらいはあるなあ。
 そして、信じたら、そこで思考が硬直してしまう。
 ちなみに、たすき掛けバッグを持っていないと思っていたのは、バッ
グを二つ買ったのちに、手持ちのバッグのショルダー紐の穴の位置を変
えてみたら、あっさり、たすき掛けバッグ第三号が誕生し、二つも新品
を買ったのは無駄遣いだったかと悔みかけたが、第三号はジャガード織
りなので雨の日専用に最適かも。
 布は、濡れても乾かせば済む。
 珍しく柔軟なる発想。
 焦ると閃くのかな。