前回、友と絶交する原因になった友の一人娘のことを「幼い」と書い
たが、
「小学生でもリストカットするのかなぁ」
不安になって確かめたら、当時、その子はもう中学生になっていた。
「幼い」を撤回して、ひと安心。
自我が芽生える季節として、中学生以上なら、まだ納得できるからだ。
「友達の真似をしただけ」
その子は説明し、友は真に受けた。
違うのに。
案の定、その子の言動は友への暴言暴力へと進み、私は、専門家に相
談するよう勧めた。
「子供に問題があって行くと、ほとんどの場合、親もカウンセリングを
受けさせられる。子供だけの問題ではなく、家族関係に問題があること
が多いらしいのよね」
いずれそうなる日が来ると見越し、数年前に一般論として伝えておい
たことが、いよいよ友に役立つ日が来るのだ。
だが、
「診察は二年待ちだって。だから止めたわ」
のけぞる私。
東京なら、いくらでも良い病院はあるでしょう。
自分もカウンセリングを受けさせられて、気づきたくない自分自身の
心と向き合うのが怖くて、二年も待てないという好都合に飛びついたん
じゃないの・・・。
友を傷つけずに伝えようと言葉を選んで沈黙が長引くと、
「ああ、だったら仕方ないよね」
友の判断に同調したことにされてしまう。
そうなった。
あーあ。身体の不調なら、医者のはしごぐらい平気でするアンタなの
に。
そう言えば、彼女は、ある時、初対面の医者にどこの医大の出身かと
尋ねたと言い、
「あの医大はねえ・・・」
私に講釈したことがあったっけ。
仕事を求めてパートの面接に行ったら、「すぐにもチーフに」と言っ
てもらったと語った直後、
「まあ、タクシーで通勤すればそう遠くないしね」
娘の夏休みに一家でアメリカに長期滞在するから、働くとしたら秋か
らと会社に言って、話が立ち消えになったらしいけど。
客のふりをして職員を査定する仕事に採用され、職員の態度の改善提
言を会社に報告していたら、自分の立場がその職員にばれて逆恨みされ、
付きまとわれている、
「けど、夫に話しても、本気にしてくれない」
そう言われたら、私は彼女が語る真実を信じるしかなくなるが、
「うちは、マンションが二つもあるからなんだわ」
言葉が続くので、
「へ?」
今ならわかる。
私は、彼女の高慢さに惑わされて、その下に隠れた特殊な嘘のつき方
が見えなかった。
しかし、二人目のサンプルが登場して、その悪の法則が理解できたの
で、たとえ逃げられなくても、もう、たぶらかされることはない。