自慢する人

 女友達から絶交され、彼女の自慢話から解放されたと喜んだら、後継
者に現われたのは年配の男性。
 彼とは面と向かって話をせざるを得ない。
 彼もまた、拝金主義者。
 普通なら定年している年齢だが、自営業で、今も現役。よって、結婚
前の仕事を過去の栄光として自慢するしかない女友達と違い、彼の話は
強烈になる。
「誰かに、年金はかけ損になる、と言われて、途中で払うのを止めたか
ら、僕は無年金」
 という前口上は、それだけで、
「友は持つべし、選ぶべし」
 と諭したくなるが、いや、実際に諭したっけ。
 私としては、諭すより、こういう人とは付き合いたくないが、そうは
いかないので、果敢に刃向かうことで戦う。
 が、彼は一向に動じず、私はカッカさせられ、息切れしそう。
 そんな私を見るのがおもしろくて、彼はこの手の話を言い募るのかと
思っていたが、怖ろしいことに気がついた。
 彼が羨ましくてカッカするのだと勘違いされているかも。
 ・・・・どうしたらいい。
 今、考え中。
 それはともかく、「僕は無年金」と言ったあと、彼は、国民健康保険
料は最高額を支払っていると明細書を見せ、それほどにも金持ちなのだ
と言外に語る。
 娘や息子が結婚したら○○万円、孫ができたら○○万円お祝いに渡す、
とか言うし。
 私の眉はビクとも動かない。
 だって、彼は、精神が金持ちじゃない。
「やっぱり金儲けは、貧乏人を相手にするのが一番儲かると、知り合い
も言っている」
 つまりは、あなたも同意見ってことよね。
 私は、こういう物があったら世の中の人の役に立つ、というような熱
き思いからスタートして成功する人の方が何百万倍も好きです。
「お金は、したいことができるだけあればいい」
 私が言うと、
「じゃあ、生活保護をもらって朝から晩までパチンコしている人達は幸
せなんだ」
 ・・・
 もう口もききたくない。
 どんな手を使ってもいいから金持ちになればいいっていう人なんです
ね。あなたは。
 初めて会った日にわざわざ私を車で送ってくれようとしたのは、車を
見て、理由がわかった。私だったら同じ外車でもこれだけは避けたいと
思うベンツだったのだ。
 ところが、それ以外の持ち物はすべて、美意識がベンツ以下。
 だから、滑稽。
 だから、一目置かれない。
 それが悔しくて、彼は必死で言葉で自慢するのだろう。
 私は、それが不思議でならない。
 なんで、自己満足では足りなくて、ひとに賞賛を求めたがる。
 迷惑なんだけどなあ。
 あなたの嘘の邪悪さに比べたら、ほほえましいけど。