女は大変 2

 夫の不倫に心が壊れ、離婚を求めるも、夫は調停に出てこず、子供達
がまだ小さいこともあり、離婚を撤回した友。
 歳月が経ち、今度は出張先の海外から、夫が友に離婚を予告した。
 友は夫の帰国前に家を出ると言い、私は強く引き留めた。
 だって、彼女は専業主婦。
 今、家を出たら、財産分与の話はどうなる。それに、マンションの鍵
を変えられたりして、自分の物を取りに帰ることすらできないことにな
ったら、目も当てられない。
 しかし、友は、長年にわたり耐えてきた夫の仕打ちを切々と訴える。
 私は、友の思いに心が寄り添う。
 それに、彼女の母親のことがある。
 友は、母親から、万一大阪に戻って来る場合でも、実家に身を寄せる
前提では考えてくれるな、と言われ続けてきたらしい。が、今回の地震
のあと、友が離婚して家を出るのなら、東京に行くから一緒に住ませて、
と言い出した。八十を過ぎて見知らぬ町に住んでもかまわない、と覚悟
したお母さんを、どうか見捨てないであげて。
 そのためにも、先立つ物は離婚後の経済的安定である。
 友は、夫の給料も資産財産もまったく把握していない。夫はそれらを
すべて書き出すと言ったそうだが、さて、どこまで信用できるものか。
 私は、とにかく専門家に相談するように、と彼女の住む町の市役所の
弁護士無料相談二十分と、離婚の扱い件数が多いという触れ込みの弁護
士事務所の一時間無料相談を探して伝えた。
 そして、過去の一連の出来事を列挙せよ、と。
 ぐだぐだ話すより、一目瞭然。弁護士も、まともに相談に乗ってくれ
るであろう。
 と、
「書き出してみると、そんなにない・・・」
 箇条書きからは自分のその時々の心情がすっぽり抜け落ちることが、
友には不本意だったみたい。
 さて、離婚という友の未来で共感し合った翌日。
 ベンツおじさんとに会う用事があり、友のことを話してみた。夫の浮
気と、その後の夫の自宅での急死という激動を経験した女性も同席して
いる。
「あまりに立場が悪すぎる。離婚しても何の得にもならない」
 ということで二人の意見は一致。
 その夜、私は友に、離婚はするな早まるな、と電話で力説した。
 翌朝、
「一度、無になって考えてみる」
 友からメールが来て、連絡が途絶えた。
 私はひと晩で寝返ったからなあ。
 軽蔑されたかな。
 でも、離婚しないのは、小さな不幸。
 離婚するのは、大きな不幸。
 そうとわかったのに大きな不幸を推奨するようでは、真の友とは言え
まい。
 たとえ嫌われたとて。