女は大変 3

 さて、海外出張中の夫から離婚を求められた友である。
 その後、私と連絡が再開した。
 友は勢いづくタイプなので、感情を優先して家を飛び出したか、と思
ったけれど、離婚は無理、と理解したらしい。
 私がインターネットで調べて紹介した弁護士事務所の無料一時間相談
に行き、過去を箇条書きした紙を見せると、ずっと専業主婦だった人が
これから働いてどのぐらい稼げると思っているのか、などと現実を突き
つけられ、
「こういう相談はありすぎて、三回で終わりにさせてもらっている」
 とも言われたとか。
 私がベンツおじさんとその知人女性に聞いた意見とほぼ同じだったの
で、納得できたらしいが、ベンツおじさんの知人女性が、
「今度、浮気の尻尾をつかまえたら、離婚したらいい。それまでは夫を
泳がせておけば」
 とさらっと述べたのが印象的だった。
 一方、弁護士は、
「離婚は、年金を分割できる七十歳まで待ちなさい」
 と言ったそうで、なんにせよ、感情が発端でも、結論は客観に委ねる
べき、という大人の賢明さを彼らは語ったわけだ。
 愛で結婚しても、いずれ、愛は環境に変わる。
 環境を成り立たせるのは、経済力。
 専業主婦は、その環境が快適なあいだは羨ましがられる立場でいられ
ても、ひとたび不穏な状況になったら、離婚が不利な立場に転落する。
 高すぎるリスク。
 だから、働く女性が増えてきたのだろう。
 男性にとってもありがたいはず。
 だって、精神的に対等な関係を望んでも、自分一人が稼ぎ手だと、
「俺が養ってやっているのに」
 と、つい言いたくなるかもしれない。
 しかし、共に家計を支え合う関係なら、そういう不遜さは芽吹かない。
 だから、東京医科大学が、医師を目指す女子の受験生を一律で減点操
作してきたと知ると、悲しかった。
 女医が増えると外科医のなり手が減る、という意見は、本当かどうか、
やってみてから言えばいい。
 外科手術を回避する予防医学が発達しないとも限らないし。
 友は、帰国した夫に、離婚したら食べていけないと伝え、夫は、友の
母親を大阪から招いて、もし今から予約が取れたら、みんなで韓国旅行
に行こう、と言い出し、離婚の話は立ち消えたとか。
 え・・・。
 友の心の騒動に捧げた私の膨大なる時間はどうなるの。
 ま。いいけど。
 でも、ダンナさん、知ってるかなあ。
 七十歳は遠すぎる。さっさと死んでくれたら、という仮定でひとしり
きり話が盛り上がった私達なのでした。