行動食

 果汁たっぷりの大きな梅干しをパクッ。
 それが食道に向かった瞬間、鼻の奥に違和感・・・。
 小さい頃、ご飯粒が一つ、鼻からぴゅーっと飛び出したことがある。あ
の時とおんなじだ。
 右の鼻の奥の方の粘膜が急に湿った状態になり、喉への管の存在も感じ
る。鼻はぐずぐず。後鼻漏のごとし。
 私が買うのはいつも梅と塩のみが原材料の梅干し。
 だが、今回、産直市で買ったら、普段スーパーマーケットで買っている
のよりしょっぱい。でも、もう幾つか食べているから、舌がびっくりした
わけはない。
 塩分を抑えるために塩以外の添加物を使う梅干しは、しょっぱくないの
で、数、食べられる。結果、摂取塩分量が多くなることがあるが、昔なが
らの梅干しは少量で食べ止めできるので、却ってよかったりする。
 それを丸ごと食べたのは、汗で流れた塩分補給を身体が欲したのだ。
 買ってきたおかきをつまんだが、足りなかった。
 男梅のグミ、ソフトキャンディーも買ってきたが、それらは今は食べな
い。
 熊野古道に持って行く。
 毎日、古道の山道を歩くのは二時間ほどの予定。
 バスの本数が少なく、山歩きに時間を割きすぎたら、熊野三山を詣で切
れなくなる。
 しかし、灼熱の季節。
 ちょっとひと息つきたくても、冷房の効いた店も喫茶店も存在しない。
 二時間でも体力の消耗は激しそう。
 どうしたらいい。
 調べて、行動食という概念に遭遇した次第。
 脂質、糖質、ビタミン、ミネラルの補給と共に、食べやすさ、携帯・保
存のしやすさも必須。
 なるほど。
 ゼリー飲料も買った。
 どんな食感なんだろう。私はまだ、この手の物を食べたことがないのだ。
 四種類選んだが、一緒に行く友は気楽なハイキングのつもりの軽装で現
われそうなので、万一のために二人分持って行くことにしたら、結構重い。
 飲料水は私の分だけにするが、買える場所がないという前提に立つと、
持って行く量が増える。
 ところで、ゼリー飲料もそうだが、栄養成分表示を比較しているうちに
苛ついてきた。
 いっそ外袋の雰囲気で選べばいんだろうけど、判断能力を停止させるだ
けの勇気はないし。
 そして、お菓子には、子供用や少しだけ食べたい人向けに少量食べきり
サイズの製品がいろいろ売られていることに改めて気づかされた。
 どれもこれも行動食じゃん。
 その視点からは便利さに感謝だが、普通は家庭用で、袋が大量にゴミと
なって吐き出されるのだと思うと、笑顔が陰る。