テレビを寡占する人達

 結局、タレントの磯野貴理子は離婚したが、彼女は七年前、テレビの番
組内で結婚を申し込まれたのだった。その際、芸人達が貴理子をいじる言
葉を投げかけ合って番組を盛り上げた。
 しかし、彼らが、収録直前、ここで君がこう言って、そうしたら君はこ
う受けて、と指示されていたことも明かされ、私はようやく理解した。
 情報番組などに招かれた専門家に、さも、今、思いついたように質問す
る人達は、芸人でなくても、みな、そう言うよう事前に仕込まれているん
だ。
 張り子の虎。
 そうでない時は本音が出る。
 その筆頭は松本人志か。
 彼の不用意な発言は物議を醸す。
 なのに、毎回、野放しにされる。
 その理由が今回の吉本騒動でわかった。
 吉本興業成長の立役者たるダウンタウンは、当時の彼らのマネージャー
が社長になっても、社長より立場が上。つまり、そんな吉本興業の大御所
ゆえ、彼らの失態は、テレビ局が見て見ぬ振りをするらしい。
 この世は理不尽で出来ている。
 愛人に子を産ませたことが発覚しても司会を続けたり、全盲男性とボー
トで太平洋横断に乗りだし遭難事故を起こしても司会に戻れる人もいる。
 それほど人材がいないのか、と私は暗澹たる眼差しになるのだが。
 テレビの不思議はほかにも。  
 女性は、アナウンサーでも、年齢が上がると裏舞台に引っ込まされるが、
芸人、それも男にそれはない。
 どうしても脂ぎったその顔のその人でないといけないのか。
 画面が美しくない。
 たまに見る若手は結構喋りがうまかったりするから、若手より圧倒的に
腕がある、とも思えないのだが。
 高画質化するテレビに耐えられなくなったら、ラジオや舞台に活躍の場
を移し、若手にテレビの席を譲ってあげたらいいのになあ。
 しかしその若手も、売れると、やはり、どの番組にも出現し始める。
 食傷する。
 ニュースですら何人ものコメンテーターが出る形式だからかもしれない。
 そこでの芸人は、話に落ちをつけることを期待されているのだろうが、
なんにせよ、出演者達はそれぞれに自説を述べて、井戸端会議の様相。
 そういうのを延々見せられる。
 テレビが総体で一方向に偏向している気がする。
 まあ、すべからく、行きすぎると飽きられ、縮小したり潰れるのが、こ
れまた世の常。
 今回の吉本興業の騒動を機に、マンネリ化したテレビの在り方が根本か
ら解体され、新しく生まれ変わってくれたら、と期待している。