干し野菜

 晴れていたら、朝食の後片付け前に野菜を切りまくり、夜の下準備を済
ませる。
 手間だが、あとで楽ができる。
 干し野菜。
 電力を極限まで使わぬ生活を実践すべく、文明の利器、冷蔵庫を手放し
た稲垣えみ子は、ふんだんに降り注ぐ太陽に野菜の水分を飛ばして半調理
状態にしてもらうのが食生活の強い味方だ、と著書の中で干し野菜を礼讃。
 次に読んだ高田かやの漫画にも、嵩が減り味が凝縮し保存期間が延びる、
と絵入りで干し野菜の話。この人の場合は自給自足のカルト村で育った知
恵であるらしい。
 前回、必要な情報が勝手に向こうから降ってきてくれるのは楽でありが
たいと書いたが、熊野古道の情報と多数遭遇したのは旅行の直前だったの
で、そのタイミングは確かに奇跡であった。
 干し野菜も、情報が相次ぎやってきてくれたので奇跡と感じたけれど、
そもそも私の中に干し野菜の認知はなかった。その情報を得たいという発
想がなかったという点で、同じように降ってきてくれた情報でも、実は種
類は異なる。
 しかし、なるべく収穫したままのものを調理したい志向の私は反応した。
 図書館で干し野菜の料理本を数冊予約。
 道具も探す。
 使い終わったら、笊(ざる)のように使ったあと、ちゃんと洗いたい。
 ステンレス製だな。
 インターネットで探し回って、見つけた。
 四十センチほどの直径の丸底一面に切った野菜を広げる。
 その上に平たい網が置けるようになっているので、そこにも野菜を置く。
 底と同じ形状のを逆にして固定させる蓋をして、物干し竿の端に吊す。
 これなら、万一干し野菜をしなくなっても、野菜の水切り用の笊にでき
ると考え、一つ購入。
 夏だったので、料理本のレシピに従い、スイカも干した。
 が、スイカはよほど有り余った時に干すのでいいと思った。じゃがいも、
葉物野菜も然り。
 どの本にも、こういうのも干せるし美味しい、と干すのが万能の調理法
のように書かれているが、生より美味くなると言えないものもある。
 でも、そういうのも含めないと一冊に仕上がらないのだろう。
 わかるから、批判はない。
 ただ、私自身は、玉葱、人参、かぼちゃ、ピーマンや獅子唐の類い、椎
茸などのキノコ類等、安定の定番で満足するのみである。
 日差しがなくても風が水分を飛ばしてくれるので、ほぼ毎朝の私の日課
 だが、今朝は不可能だった。
 雨。
 今、窓ガラス全体を風が大きく揺らし始めた。
 怖い。
 台風十九号の進路だ。