将棋、囲碁、百人一首、花札

 将棋界に天才が現われた。
 三十年ぶりに最年少タイトル獲得記録を更新した、藤井聡太棋聖
 彼は、幼い頃、囲碁には興味を示さなかったが将棋にのめり込んだと知
り、将棋、囲碁百人一首花札など、日本の古典的な遊びを家庭で子供
に伝承するのは、当たり前すぎて声高に語ることもない常識なのか、など
と思ったのは、我が過去を振り返ってのことである。
 が、これだけで一般論化するのはいきすぎかも。
 うちでは父が与えてくれた。
 将棋と囲碁は、木製の原寸大だが二つ折りタイプ。今もある。今も遊べ
る。
 もっとも、百人一首は「坊主めくり」。
 囲碁は「五目並べ」。
 将棋は、桐箱の片側に駒を全部入れ、その箱を盤の上に逆向きに置き、
息を詰めてそうっとはずし、そこに現われる駒の山から駒を一つ、山を崩
さぬよう取ってゆく「将棋崩し」。
 あるいは「ひょこまわり」「はさみ将棋」。
 花札だけだ、子供ながらも正しいルールで遊べたのは。
 それでも、五目並べには結構はまった。毎晩、父に相手をしてもらい、
定石を覚え、負けると、勝つまで挑む。
 五目並べは数手先ぐらいまで読めたら十分だし、紙と鉛筆があればでき
るので、フランスで校長宅で滞在中、紙に枡目を書いて説明したら、校長
が食いつき、毎晩、楽しんだ。
 が、化学の高校教師の奥さんは、途中で勝負を投げ出すし、横で見てい
るだけなのはつまらない、と無言の圧力。
 この夫婦に花札を教えるのはやめた。
 花札は嵩張らないので、万一の時用に持参していたのだが。
 これは、女友達宅に招かれた夜、夕食のあと、テーブルに広げて見せた。
 旦那の眼が輝く。
 夫婦と私の三人というのは理想的な人数である。
 短時間で決着が付くから、飽きたらすぐにやめられる。
 二、三回の練習で、二人は役も完璧に覚え、すぐに本番。
 しかし、
「もう一回」
「もう一回」
 旦那が言い、お開きになったのは深夜三時過ぎ。
 ところで、なぜ私は、将棋は、自己裁量で却下したのか。
「将棋崩し」は幼稚すぎて論外だが、「ひょこまわり」や「はさみ将棋
も駄目なのか。
 駒は全部は使わない。
 それでも、漢字が読めない人達は、読めず意味もわからぬことが心にひ
っかかり、ゲームを面白がれない気がしたのだ。
 でも、一度、検証したくなってきた。
 ちょうど、校長夫婦は、今年、日本を訪れる。
 そのはずだったが、コロナのせいで旅は延期に。
 まあ、そのうち。
 気長に待とう。