医者に私の握力を聞かれ、春、測定した時の記憶を思い出し、
「割と良かったです」
と答えたら、何歳代の数値だったかと重ねて問われ、
「三十代だったと思います」
と答えたのは、三十代か四十代だったと思うが、若い方が腕力があるはず、
と若い方に賭けたのだ。
すると、
「握力は、四十代に一番高くなるんやけどね」
なんでも若けりゃ良いということではないようである。
家で確認したら、左二十九.八kg 右三十二.一kg。
左は三十代。右の数値はすべての年代の上限を超えていて、表にない。
だからかも。私は、洗濯物を洗濯機から出すと、左腕を竿に見立て何枚も
重ねて掛け、今度はそれを一枚ずつハンガーに掛けてゆく。それがもっとも
時短になると思っているから。先日は、タオルの詰め放題で、たぶん最高枚
数を叩き出した。
けど、医学的には握力で何がわかるの。
医者は明確な説明をしてくれなかった。
知りたきゃインターネットがあるだろう、ということか。
たかが握力測定と思っていたけど、体幹や、立った時の足の強度など、全
身の筋力が物を握る力となって表われるという理屈を知ると、握力測定がも
のすごく賢いものに見えてきた。死亡リスクにも関係するというし。
何がわかるのか、という私の問いに、
「いろいろなことがわかる」
と医者が答えた内容は、こういうことだったのだろう。
でも、握力で筋力がわかる、ぐらいは話してくれてもよかったのに。
言葉を惜しまれたなあ、と思っていた。
勘違いだった。
その診察日に、医者は、人はどうせ死ぬけれど、それまでの体力曲線が直
近までなるべく高くあるのが理想だと図に描いて説明してくれて、その紙を
見直したら、
「筋力 握力」
と書き、女性は三十代ならOK、二十代は△、十代は×。
二十代、十代の場合は筋トレが必要、と書いてくれている。
私は、聞いていたのに、聞き逃していた。
なのに説明してくれなかったと思い込んでいたのだから、困ったモンだ。
ごめんなさい、先生。
人が喋りながら書いてくれるのを眺めるのでは記憶に残りにくいのかも。
やはり、自分でメモする。
あとで読み返して読めない雑な字になっても、その時の会話は蘇るから、
ゆっくり清書すればいい。
そういう姿勢でいると、医者の説明が早くて付いていけず、
「えっ」
と声をあげたら、もう一度、説明してくれる。
「栄養指導を受けますか」
と言われたのは、こういう私の姿勢を熱心だと見てくれたからかもしれな
い。
別の病院でのことだ。