木枯らし一号

 雨続きで、外出を控えていたからかもしれない。あるいは雨のあいだは
花の香りは遠くまで飛ばないのか。
 金木犀
 十月の花。
 ただ、以前、トイレの芳香剤にこの匂いを採用しているのがあって、本
物の匂いを嗅いでも芳香剤を連想する思考回路ができてしまい、花の香り
に季節を感じることが、金木犀に限って、できなくなった。こういう人工
的な香りを創る人達は、そこんとこ、心してほしいものである。
 でも、そろそろ匂うはずが匂わないと、寂しい。
 やっぱり十月は金木犀が香ってこそ。
 雨が上がって出かけた日。匂いに包まれ、安堵した。
 でも、木はどこ。
 後日、匂ってから、随分歩いた所に一本見つけた。匂いは遠くまで流れ
るんだなあ。
 花は縮れて終わりかけだったが、とにかく匂いを嗅げたので、満足。
 そして、「あ」と思ったら、くっつき虫がパンツについた。
 そんな季節。
 けど、きのう、近畿地方で木枯らし一号が吹いた。
 九月に入っても三十五度以上の猛暑日
 十月は台風と秋雨で晴れが少なく、ようやく晴れたと思ったら、もう木
枯らし。
 日本の秋ってこんなに短かったっけ。
 今年の木枯らし一号は、一九八一年、一九九三年に並んで観測史上最速
だったらしい。
 今朝、私は九時前まで起きられなかった。
 深夜を回って寝ても、私に必須の睡眠時間七時間眠ってから起きるので
あればいいけれど、毎日、少し不足する睡眠時間が積み重なっていて、そ
の疲れが一気に出たのかもしれない。
 ところが、たっぷり寝たのなら頭はすっきりして当然だろうに、そうな
らなかった今日一日。
 季節の変わり目のせいかなあ。土用の期間は不調になることが多いとい
う話だけど。
 それでも、衣替えをした。
 頭が明晰に働かないのなら、それでもできること。それに、今日してお
かないと、来週、困る。
 機械的に作業するだけでいいので、短時間で終えられた。引き出しに入
っている夏物を出し、そこに冬物を入れたら終わりとなるよう工夫してあ
ったのが功を奏したのだ。
 衣替えも、机の上も、冷蔵庫の中も、暮らすって管理することだと思う。
 そのためには、最初に仕組みを作っておくこと。その時頭を使ったら、
あとはもう頭を使わなくていい。すべてに思考を配分できる私ではないと
気がついたのだ。
 必要なところに思考を集中投下するための管理法。
 でも、機械類は機械が求めることに応じるしかない。
 なんだかなあ、とちょっと思う。