別名「熟慮」は駄目かなあ

 決断力のない私だが、優雅に迷っている時間がないとなると、途端に決
断の人になる。
 出かける前、最後に冷蔵庫の省エネ運転のボタンを押したら無反応。中
は真っ暗。
 午後の外出までに食料品を買いに行くつもりだったが、当然、中止。
 パソコンの電源を入れ、立ち上がるまでのあいだに、冷蔵庫のマニュア
ルを探す。電化製品などのマニュアル一式を集めた中から探し出し、この
症状を説明するページを探すが、ない。ここまで所要時間十分。素早いね、
私。
 そのメーカーのお客様相談センターに電話する。
 症状を告げ、言われたことをやってみるが、どれも駄目。
 コンセントから電源プラグを抜く方法を告げられ、もうやったと言った
ら、抜いて二十分ぐらい放置すると言う。
 私は三十秒ほどでやめていた。
 待ってもらい、プラグを抜いた。ついでに、故障した時はなるべく扉を
開けない方が中の物が腐らないが、必須の物は保冷剤を入れて別で保存す
るといいと言われた保冷剤での救済方法も、この時、ちゃっかり実行。
 固定電話からかけていたので、言われたことを試すたび、
「ちょっと待ってください」
 と待ってもらっていたのだ。
 プラグを抜くのもそれと同じだったが、少し時間がかかる振りをした。
 まだ十六年目で壊れたことがショックで尋ねたら、修理の部品の保管年
数九年を越えたら、いつ寿命が来ても仕方ない、という誰に聞いても金太
郎飴解答。日本のメーカーの冷蔵庫は二十年以上余裕で持つと信じている
んだけどな。
 でも、現実は現実だ。私は、買うべき機種相談へと話題を変えた。私の
希望条件や担当者が説明してくれる機能差などから候補を決めた。
 ところが、それは、その数日後に世の中に出回る新製品だという。型落
ちの品番なら安く買えると思ったが、それは不可能ってこと。
 どうすりゃいいの。
 三時間後の外出までに家電販売店に駆け込むしかないのか。
 覚悟を決め、最後に、電話が繋がっているあいだにプラグを入れた。
 えっ。
 冷蔵庫が復活。
「帯電していたのが、放電したのでしょう」
 この意味は今もよくわかっていないが、冷蔵庫は命を吹き返した。冷蔵
庫ってこんなに静かなものだったのね。
 ところで、このことがあって、私はわからなくなった。
 大きな異音が始まってすぐに買い換えに走らなかったから、無駄に買い
換えなくて済んだ。優柔不断に先延ばしにしたおかげだ。
 私は、決断力がなくていいのだろうか。