フランスの郵便

 先日、テレビをつけたらオードリー春日のプロポーズまでを密着放映し
ていた。
 春日と言えば、彼宛ての郵便物は、細かい番地を書かなくても、むつみ
荘と彼の名前だけで届くのだとか。
 フランスの地方の中学校に教員に準ずる形で滞在していた時、春と秋に
イギリスへの学校旅行に同行し、同じ家にホームステイさせてもらったら、
クリスマスにその奥さんからカードが来た。宛名は、フランス、市の名前、
中学校名、私の名前。それで届いたので、さすが田舎、と感心させられた
が、春日の例を見ると、有名になれば、日本でも大都会を田舎仕様にでき
るのかも。
 先週、フランス人の友からそろそろ手紙が届いてもいい頃なのにと思い
始めていたら、私から送った手紙が返送されてきた。貼られたシールに、
宛名国から理由は不明で返還された、というようなことが書かれている。
 友は、突然、引っ越しでもしたのか。
 友はパソコンを持っていないので、メールのやりとりしている知人に頼
んで、電話してもらおうかなあ。
 いや、フランスのことだ。次の手紙は普通に着くのではないか。
 そう考えるとは、そのとおり、私はフランスの郵便を信用していない。
 去年、何度か重要な書類をフランスとやりとりする必要があって、向こ
うからは航空便で届くが、私からは毎回、追跡と紛失時の保証がついた方
法で送っていた。通常七日ほどで着くことになっている。が、一度、日本
を翌日の飛行機で出発したが、パリ到着後、ずっと空港内で留め置かれ、
先方に配達されたのは三週間以上経ってから、ということがあった。高く
ついても、普通の郵便にしなくてよかったのだ。
 私は、友に新たに手紙をしたため、送り返された封筒ごと別の封筒に入
れて送ることにした。
 住所を書くべく、住所録を開く。
 あ・・・。
 郵便番号の数字が一つ間違っている。
 日本の郵便局は、集合住宅の号室違いのポストに誤配することもあるか
ら完璧とは言えないが、海外からの手紙に私の住所が途中から抜け落ちて
いても、番地が間違っていても、私を突き止め、鉛筆で正しい住所を書い
て、届けてくれる。
 私が間違って書いたフランスの郵便番号は同じ県内に存在するから、そ
の程度の間違いで、なんで届けられないことがあるだろう。住所は正しい
んだし。
 それに、送り返すのであれば、なんで一ヶ月以上も経ってからなんだ。
 怒りも失望もなく、ただそう思う。
 フランスには期待していないってことなんだろうな。