指輪を売らないために

 金の相場が下がっている。
 もう一度、七月の高値に戻ってくれないかなあ。
 先物相場に手を出しているのでもないのに、なぜ。
 もしホワイトゴールドの指輪を売るなら、高く売りたいじゃない。
 私は、三十歳になったら、本物のアクセサリーを数少なく持とう、と
考えていた。
 二十代は肌が若すぎて、本物は下品。でも、三十になれば、大人の貫
禄が出てきて、宝石負けしなくなる。なのに、肌はまだすべすべ。そん
な季節を最大限に満喫するためにも、三十になったら、なるべく早くデ
ビューしなくっちゃ。
 ホワイトゴールドの指輪は、私の肌にはシルバーが似合わないので、
シルバー代わりに買った。それを久しぶりに嵌めてみたら、嵌まらない。
 そう言えば、右手の薬指が定位置だったメレダイヤの指輪も、広幅の
ゴールドの指輪も、数ヶ月前から、左手の薬指が定位置に移っている。
 指が太ったってこと?!
 だけど、指って太るんだろうか。
 太った人は、指もぽっちゃりしている。
 でも、私は、パソコンの打ちすぎ、ではないのかなあ。
 寝ているあいだも、両手が、かすかに熱を持ち膨張したような感じが
する。
 パソコン依存の私は、家ではiMacだが、キーボードは先代のiBook
に買ったキーボードを引き続き使っていて、これが、強打しないと、抵
抗して引っかかるキーがいくつか出現しているのだ。
 そういうのが指の負担になっていることはないか。
 気になったら実行せずにいられない私は、早速、iMacに付属のキーボ
ードに替えてみた。すると、見かけはほとんど同じなのに、タッチの軽
いこと!
 古い物から使い切ろうとする「もったいない」精神が、指のためには
間違いだったわかって、ちょっとショック。
 私の指は、太ったのではなく、むくんだのよ、という友あり。
 指をよく使う人は関節が太くなるそうよ、という友あり。
 なんにせよ、指のサイズが変わると大いに困るので、本気で元に戻っ
てほしいと願っている。
 どうしても駄目なら、ホワイトゴールドの指輪は・・・売る?
 実は、相場が一番高かった時、「金、プラチナ製品、高く買い取りま
す」の看板が出たアクセサリー店で訊ねたら、買い値の三分の一ほどの
値段を言われ、アクセサリーだとそこまで買い叩かれるのか、と驚いた
ものの、一方では、それでも買い取ってはもらえるんだ、と感心。
 その時売らなかったのは、店員の対応がなんとなく虫が好かなかった
からだ。